「達」は一本少ない漢字が正しい?間違いやすい表記の正体を総特集
「達(たつ)」という漢字、日常的によく見かける字ですが、実は、子どもたちが覚えるのに苦労しているものです。
子どもたちは、「しんにょう」をのぞいた部分を「幸」と書いてしまうようです。
そう、タイトルにあるように、『「達」は一本少ない漢字が正しい』文字だと思っちゃうようです。
この記事では、「達」の「一本少ない」バージョンの正体について紹介すると共に、なぜ、子どもたちが、線が一本少ない表記で覚えるのか総特集します。
「達」は、1回覚えてしまえば違和感なくかける漢字です。
雑学として楽しめると思いますので、どうかご一緒に最後までご覧ください。
「達」は一本少ない漢字が正しい?
「達」という漢字は、「友達」「子ども達」「あの人達」などと、割と頻繁に見かける漢字です。
始めに、この漢字の基本情報を見ておきましょう!
画数 | 11画 |
部首 | しんにょう |
音読み | タツ、ダチ |
訓読み | とお・る、とお・す |
意味 | ①とお・る。とお・す。路が障りなく通ずる ②とお・る。とお・す。物事がスムーズに通る ③広く通用する ④すらすらと理解する ⑤すらすらと出世する ⑥すらりと通してこだわらない ⑦姓のひとつ |
日本語だけ | ①こなしがうまい ②役所からの知らせ ③品物や郵便を届ける ④人の複数を表す言葉 |
この「達」という漢字は常用漢字です。
となると、「達」は一本少ない漢字が正しいのかという問に対する答えは「No!」ということになります。
この部分を追いかけます。
「達」という漢字は、「土」「羊」「辶(しんにょう)」で構成される漢字です。
タイトルにある一本少ない漢字とは、「幸」「辶(しんにょう)」で構成される「逹」という漢字のことです。
実は、この「逹」は「達」の異体字です。
実際に漢字が存在するのです。

書き順を見てわかるように明確な違いが2点あります。
- 達の「土」「羊」が「幸」
- 達は一点しんにょう、逹は二点しんにょう
このように、「達」は標準字体で常用漢字、「逹」は「達」の異体字なのです。
この「達」ですが、大正 12年(1923年)に決定された常用漢字でも、下記のように「逹」 ではなく 「達」(二点しんにょうですが) となっています。

育英書院 編輯『常用漢字表 : 臨時國語調査會發表』,育英書院,1923.6. 国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2025-07-20)
達の成り立ち
達の成り立ちを見ていきます。
「達」は、「羍」+「辵(行く・みち)」で構成されています。
「羍」の漢字は「大」+「羊」で構成されています。
「大」は手足を大きく広げて立つ人の形で、「ゆったりしている」イメージを持ちます。
ここから、「羍」は、羊の子が余裕をもって産道から通り抜ける状況を想定した図形を表します。
これにより、「辵(行く・みち)」をプラスした「達」は、「スムーズに通る」ことを示しています。
上記に示した意味をみるとピタリと合っていますね。
現在の「達」は、「大」+「羊」が「土」+「羊」に変わっています。
間違いやすい表記の正体
さて、今、紹介した「達」ですが、いくつかのサイトを見ていると、一本少ない漢字「逹」を書く子供達、中高生・受験生が多いと書かれています。
この漢字、小学4年生の時に習う教育漢字ということですが何で間違えるのでしょうか。
ひょっとすると、読者の方も間違えて覚えている人がいるかもしれないですね。
この要因として考えられるのが、小学3年生で習う「幸」が影響している方もいます。
実は、先程、漢字の構成で見てきたように、「達」という漢字は、「土」「羊」「辶(しんにょう)」でした。
「土」小学1年生、「羊」は小学3年生、「辶(しんにょう)」は小学2年生で習うので、上記の構成から考えると間違えようはないんですけどね。
漢字の構成を見ないでチラ見すると、確かに「土」「羊」部分が「幸」に見えちゃうかもしれません!
まあ、そういうことで、間違う原因が分かったところで、これも上述した「大」+「羊」が「土」+「羊」に変わってのだということを念頭においてくだされば、今後、間違うことはないと思います。
※点一つなのか二つなのかを悩んだ漢字は次の通りです。
⇒ 辻は点一つでも間違いじゃない!その理由から出し方まで大特集
⇒ 樋の点一つの漢字は出せる?パソコン・スマホ・テプラで試してみた
異体字「逹」の出し方
最後に、「達」の一本少ない漢字である異体字「逹」の出し方を簡単に紹介します。
パソコン
パソコンでは、文字変換、Unicode変換の2つが使えます。
文字変換では「たち」と入力して変換キーを押します。
複数回変換キーを押して、漢字候補が広がったら、「単漢字」を見つけてクリックします。
すると、「逹」が表示されるのでクリックしましょう。
次に、Unicodeを使う方法です。
日本語で、「9039」と入力してF5キーを押すだけです。
「9039」の代りに「6D7D」でも「逹」が候補にあるのでクリックすれば出せますよ。
Unicode変換の注意点は「日本語で入力する」ことだけです。
スマホ
スマホでは文字変換が使えます。
文字変換では「たち」と入力して変換候補を出しましょう。
すると、「逹」が表示されるのでタップするだけです。
テプラ
テプラでは、上位機種に「逹」(区点コード7793)が用意されています。
下位機種には登録されていませんね。
最後に
「達」は一本少ない漢字が正しいのかを見てきました。
漢字「達」は常用漢字なので、一本少ない漢字が正しいのかという問いには「No」と答えるしかなかったですね。
ただ、「土」+「羊」の部分が「幸」となる漢字は異体字として存在していました。
どうやら、この部分を間違えるのは子供達だけではなく、受験生まで(大人も入ってる?)含まれておるようです。
今回、「達」の成り立ちも見てきましたので、今後、間違えることはなくなるはずですよ!
※「その他の漢字」も大所帯になってきました
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