鹿肉の別名を何という?実は300年前以上も遡った所に由来があった
普段、口にする肉は、牛、豚、鶏がほとんどですね。
ただ、旅に出かけた時など、上記で挙げた肉以外のお肉を食べる機会があると思います。
たとえば、猪の肉などは、山にある温泉に行った際に提供されることがありますよね。
その他にも、きじやウサギ、馬なども食べることがあるでしょう。
今回は、そんなお肉の中でも、あまり目にすることのない鹿肉についてです。
実は、今挙げてきた猪や馬、鹿は別名で呼ばれることがしばしばあります。今回は、そんな中でも鹿の別名について追いかけていきます。
是非、ご覧ください。
鹿肉の別名は?
まずは、鹿肉の別名をお知らせします。
鹿肉の別名を何という?
鹿肉の別名は何というでしょうか?
「もみじ」といいます。
秋になると紅葉する「もみじ」のことです。
なぜ、鹿肉がもみじと呼ばれるのか、その理由は、いくつかあるんです。
- 「花札説」:花札の絵柄に鹿と紅葉が出ているから
- 猿丸大夫が詠んだ和歌説:「奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 聲きく時ぞ 秋はかなしき」から
1.は、花札にあるこの絵札、紅葉(もみじ)と一緒に鹿が描かれていますよね。ここから、鹿肉を「もみじ」と呼ぶようになったとされているんですなあ。
2.は、百人一首にも選ばれている歌で、紅葉(もみじ)と鹿が共に入っている所からですね。
それでは、鹿肉に対して、なぜ、こんな別名が付けられたのかを見ていきましょう。
その原因は、現在から約300年以上も前の江戸時代前期まで遡ることになります。
この時代、江戸幕府第5代将軍、「犬公方」と称された徳川綱吉によって施行された「生類憐みの令」が、そもそもの原因なんですよ。
生類憐みの令
第5代将軍・徳川綱吉によって制定された諸法令の通称で、動物・嬰児・傷病人保護を目的とした「生類を憐れむ」ことを趣旨としています
対象とされた動物は、犬、猫、鳥、魚、貝、虫などにまで及んだそうで、このとんでもない政令によって、生き物を食べることが禁忌と見なされるようになってしまいました。
それを逃れるために、町人たちが苦肉の策として始めたのが、肉に別の名前を付けて目先を変えることだったんですよ。
次のような呼び方です。
- 畜産業者:馬肉を「さくら」・鶏肉を「かしわ」
- 猟師等:鹿肉を「もみじ」、猪肉を「ぼたん」
また、これを受けて、購買側の町民たちも、上述の肉を植物であると言い換えながら購入したのです。こうすることで、「生類憐みの令」の処罰の対象から逃れたんですね!
さすが、庶民たちは頭がいいぞ!と思います。
こうして生まれたそれぞれの言葉が、なんと現代まで受け継がれてきたというわけです。
ちなみに、牛肉や豚肉に別名がないのは何故なのでしょうか?
それは、牛肉や豚肉は、食肉として流通したのが明治時代以降だったからです。
江戸時代以前は、鹿・猪・馬・鶏の方が食肉として主流であり、牛や豚はほとんど食べられていなかったからなんですよ。
もみじの特徴
鹿肉(もみじ)の特徴は次の通りです。
- 脂肪が少なくて、低カロリー
- 高タンパク
- 鉄分の含有量が非常に高い
上記の理由から、鹿肉(もみじ)はヘルシーなお肉と言われており注目を集めています。
FotoosVanRobin from Netherlands, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
鹿肉は、上記写真にあるように他の肉と比較して肉の色が濃いです。これは、ヘム鉄というタンパク質を多く含有しているからです。
そのため、この赤色=血をイメージさせ、消費者が購入に躊躇してしまう例が多く見られます。
鹿肉は「臭い」と言われる原因は、血抜きなどの適切な下処理が行われていないからです。
おいしい鹿肉を手に入れる方法は次の2つです。
✓適切な下処理をした鹿肉の入手
✓塩麴や塩水などで臭みとりを実施
鹿肉(もみじ)の調理は加熱処理しなければなりません!生食の場合、次の病気になる可能性があります。
- E型肝炎
- 住肉胞子虫による食中毒
住肉胞子虫(Sarcocystis fayeri)は、食物連鎖を利用して生きる寄生性の原虫です。これまでに国内では、住肉胞子虫を原因とするシカ肉による有症事例が5件報告されています。
引用 ジビエの住肉胞子虫に要注意
他の獣肉の別名
冒頭で少し触れた、他の獣肉の別名を簡単に見ておきましょう。
- 鶏肉 かしわ
- 馬肉 さくら
- 猪肉 ぼたん
それぞれの名称について由来を述べておきます。
鶏肉:かしわ
名称の理由は「柏の葉」と言われています。
「柏の葉」は、端午の節句で食べられる柏餅を包んでいる葉っぱですよね。鮮やかな緑色をした柏の若葉です。
この「柏の葉」ですが、時期によって少し暗い茶色をしており、この色が鶏肉と似ているため、鶏肉に「かしわ」という名前が付けられたそうです。
馬肉:さくら
こちらの由来には複数の説があります。
説 | 理由 |
---|---|
新鮮な馬肉が桜色である | 捌いてすぐの馬肉は、鶏肉や猪肉と比較して赤色が薄く、淡い桜色をしているから |
春の馬肉は脂が乗っておいしい | 馬が餌を沢山食べて冬を越しているため栄養が載っているから |
始めの説は、江戸時代では変色スピードが早い(桜色である時間が極端に短い)ので疑問も出ているようです。
この疑問から、2番目の説が出てきているようです。
猪肉:ぼたん
こちらも複数の説があります。
- 猪肉を皿に盛り付けるとき、「牡丹(ぼたん)の花」のように飾ることから
- 東本願寺に「唐獅子牡丹図」という絵があり、獅子と牡丹の花がセットで描かれており、「獅子(しし)」と「猪(いのしし)」を掛けて、イノシシ肉は隠語で「牡丹肉(ぼたんにく)」
- 猪は「山鯨(やまくじら)」とも呼ばれ、クジラ肉は食べても問題ない食材だったため隠語として用いた
始めの説ですが、「ぼたん鍋」に出てくる皿に盛られた肉は、本当の「ぼたん」の花のようにきれいです。
最後の説では、猪の肉はボタンの花のように赤いから、そういわれたようです。
次の章では、おまけを用意しました。
おまけ:海外ではどんな名前
記事を終わる前に、おまけとして、世界の言葉では「鹿肉」を何と言うか調べてみました。
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
英語 | Venison | ベニズン |
ドイツ語 | Wild | ウィルド |
オランダ語 | Hertenvlees | ハートフレイス |
フランス語 | Venaison | ベズニゾン |
イタリア語 | Carne di cervo | カラメリチェルボ |
スペイン語 | Venado | ベナード |
ポルトガル語 | Carne de veado | カーメジベアード |
スウェーデン語 | Viltkött | ビューチェ |
ノルウェー語 | Hjortekjøtt | イヨッテショッツ |
中国語(繁体) | 鹿肉 | ルーヨウ |
中国語(簡体) | 鹿肉 | ルーヨウ |
ロシア語 | оленина | アリーニナ |
英語では、「Venison(ベニズン)」でした。スペルが似ているのが、フランス語「Venado(ベナード)」、とスペイン語「Venado(ベナード)」でした。
それと、スウェーデン語が「V」で始まるスペルでした。
あとは、イタリア語とポルトガル語が似た感じです。オランダ語とノルウェー語は「H」で始まるものの、発音は全く異なっています。
中国語の漢字は日本と同じ表記ですが、発音は「ルーヨウ」でしたね。
ロシア語は、全く他と異なるスペルと発音でした。
最後に
鹿肉の別名を見てきました。
なぜか植物の名前が付いていましたね。由来は説が2つありましたが、その発生が、犬公方につながるとは思いませんでした!
鹿肉は食べたことはありませんが、時代小説などでは、鹿を狩って肉を食べるシーンは何度か見ています。実際はうまいらしいので機会があれば食べてみたいですね。
その他のお肉にも触れましたので、機械があれば記事に会いたいかな。
■実は、「鹿の別名」も記事にしています。こちらは、9つも別名があるんですよ。
※気づけば「別名」の記事も増えてきました
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