鹿肉の別名を何という?実は300年前以上も遡った所に由来があった

普段、口にする肉は、牛、豚、鶏がほとんどですね。
ただ、旅に出かけた時など、上記で挙げた肉以外のお肉を食べる機会があると思います。
たとえば、猪の肉などは、山にある温泉に行った際に提供されることがありますよね。
その他にも、きじやウサギ、馬なども食べることがあるでしょう。
今回は、そんなお肉の中でも、あまり目にすることのない鹿肉についてです。
実は、今挙げてきた猪や馬、鹿は別名で呼ばれることがしばしばあります。今回は、そんな中でも鹿の別名について追いかけていきます。
是非、ご覧ください。
鹿肉の別名は?
まずは、鹿肉の別名をお知らせします。
「もみじ」といいます。
秋になると紅葉する「もみじ」のことです。
なぜ、鹿肉が「もみじ」と呼ばれるのか、その理由は主に2つです。
- 花札説:花札の絵柄に鹿と紅葉が出ているから
- 和歌説:「奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 聲きく時ぞ 秋はかなしき」から(猿丸大夫)
ネット上を見て回った結果です。
「花札説」の方が「和歌説」よりも多かったように思います。
それぞれの説について、出どころを見ていただきましょうか。
花札説
若い方って、「花札」なんて知らない方も多いのでは。

花札説は、花札にあるこの絵札がルーツだというモノです。
紅葉(もみじ)と一緒に鹿が描かれていますよね。
ここから、鹿肉を「もみじ」と呼ぶようになったとされているんですなあ。
そう言ってるサイトがたくさんありましたので箇条書きにします。
- 花札の絵柄に鹿と紅葉が一緒にのっていることが語源
- 「花札説」が有力である。紅葉と一緒に描かれている動物が鹿であるため
- 花札の10月札「鹿に紅葉」の絵柄から
- 花札の10月(花が紅葉)の種札(10点札)が鹿であるため
- 花札の10月の札である紅葉(もみじ)と鹿が描かれていることから
- 10月の花札に鹿と紅葉が描かれていることから
- 花札の10月札「鹿に紅葉」の絵柄から
今度は、X(ツイッター)も見てみました。
こちらは、花札の絵柄をルーツと言ってます。
こちらも花札です。
これも花札をルーツに求めていますね。
和歌説
次は和歌説です。
こちらの歌は上述していますが、下記の通りで、百人一首にも選ばれている歌で、紅葉(もみじ)と鹿が共に入っている所からですね。
「奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 聲きく時ぞ 秋はかなしき」
こちらの説についてもサイトを当たってみた結果をお知らせします。
- 猿丸大夫が詠んだ「奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 聲きく時ぞ 秋はかなしき」から
- 『古今和歌集』の「おく山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の こえきく時ぞ 秋はかなしき」から
- 百人一首の「奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の 声きくときぞ秋は悲しき」からとった
- 猿丸大夫「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」から
- 紅葉鍋の由来は、『奥山に紅葉ふみ分けなく鹿の聲(こえ)きく時ぞ秋は悲しき』という和歌
なぜ、こんな別名が付いたのか?
それでは、鹿肉に対して、なぜ、こんな別名が付けられたのかを見ていきましょう。
その原因も2つ出て来ました。
- 宗教的な理由によって肉食文化がなかった
- 江戸時代5代将軍徳川綱吉が発した「生類憐みの令」
生類憐みの令
第5代将軍・徳川綱吉によって制定された諸法令の通称で、動物・嬰児・傷病人保護を目的とした「生類を憐れむ」ことを趣旨としています
日本は、肉食が好まれていなかったようなんですが、実際は、牛や豚は食べないものの、それ以外の獣は食していたようです。
時代小説を読むと、ウサギや猪、ツル、キジなどを食べるシーンを読んだ記憶があります。
これらの原因についてもサイトをめぐった結果を箇条書きにします。
まずは、宗教的な理由について。
- 宗教的な理由によって僧侶にとって肉食文化がなかったこと
- 肉を食べることを禁じられた時代に、「紅葉」などの隠語をつくりお肉のことを呼んでいた
綱吉のせいにしているモノは次の通りです。
- 5代将軍徳川綱吉の「生類憐みの令」で、生き物を食べられなくなったから
- 「生類憐みの令」で肉食が禁じられたものの、それをかいくぐるために隠語を用いた
Xにもありました。
こうして生まれたそれぞれの言葉が、なんと現代まで受け継がれてきたというわけです。
ちなみに、牛肉や豚肉に別名がないのは何故なのでしょうか?
それは、牛肉や豚肉は、食肉として流通したのが明治時代以降だったからです。
江戸時代以前は、鹿・猪・馬・鶏の方が食肉として主流であり、牛や豚はほとんど食べられていなかったからなんですよ。
鹿肉(もみじ)の特徴
鹿肉(もみじ)の特徴は次の通りです。
- 脂肪が少なくて、低カロリー
- 高タンパク
- 鉄分の含有量が非常に高い
上記の理由から、鹿肉(もみじ)はヘルシーなお肉と言われており注目を集めています。

FotoosVanRobin from Netherlands, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
鹿肉は、上記写真にあるように他の肉と比較して肉の色が濃いです。これは、ヘム鉄というタンパク質を多く含有しているからです。
そのため、この赤色=血をイメージさせ、消費者が購入に躊躇してしまう例が多く見られます。
鹿肉は「臭い」と言われる原因は、血抜きなどの適切な下処理が行われていないからです。
おいしい鹿肉を手に入れる方法は次の2つです。
✓適切な下処理をした鹿肉の入手
✓塩麴や塩水などで臭みとりを実施
鹿肉(もみじ)の調理は加熱処理しなければなりません!
生食の場合、次の病気になる可能性があります。
- E型肝炎
- 住肉胞子虫による食中毒
後者のシカ肉による有症事例が5件報告されています。
海外ではどんな名前
記事を終わる前に、おまけとして、世界の言葉では「鹿肉」を何と言うか調べてみました。
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
英語 | Venison | ベニズン |
ドイツ語 | Wild | ウィルド |
オランダ語 | Hertenvlees | ハートフレイス |
フランス語 | Venaison | ベズニゾン |
イタリア語 | Carne di cervo | カラメリチェルボ |
スペイン語 | Venado | ベナード |
ポルトガル語 | Carne de veado | カーメジベアード |
スウェーデン語 | Viltkött | ビューチェ |
ノルウェー語 | Hjortekjøtt | イヨッテショッツ |
中国語(繁体) | 鹿肉 | ルーヨウ |
中国語(簡体) | 鹿肉 | ルーヨウ |
ロシア語 | оленина | アリーニナ |
英語では、「Venison(ベニズン)」でした。スペルが似ているのが、フランス語「Venado(ベナード)」、とスペイン語「Venado(ベナード)」でした。
それと、スウェーデン語が「V」で始まるスペルでした。
あとは、イタリア語とポルトガル語が似た感じです。オランダ語とノルウェー語は「H」で始まるものの、発音は全く異なっています。
中国語の漢字は日本と同じ表記ですが、発音は「ルーヨウ」でしたね。
ロシア語は、全く他と異なるスペルと発音でした。
他の獣肉の別名
冒頭で少し触れた、他の獣肉の別名を簡単に見ておきましょう。
- 鶏肉 かしわ
- 馬肉 さくら
- 猪肉 ぼたん
それぞれの名称について由来を述べておきます。
鶏肉:かしわ
名称の理由は「柏の葉」と言われています。
「柏の葉」は、端午の節句で食べられる柏餅を包んでいる葉っぱですよね。鮮やかな緑色をした柏の若葉です。
この「柏の葉」ですが、時期によって少し暗い茶色をしており、この色が鶏肉と似ているため、鶏肉に「かしわ」という名前が付けられたそうです。
馬肉:さくら
こちらの由来には複数の説があります。
説 | 理由 |
---|---|
新鮮な馬肉が桜色である | 捌いてすぐの馬肉は、鶏肉や猪肉と比較して赤色が薄く、淡い桜色をしているから |
春の馬肉は脂が乗っておいしい | 馬が餌を沢山食べて冬を越しているため栄養が載っているから |
始めの説は、江戸時代では変色スピードが早い(桜色である時間が極端に短い)ので疑問も出ているようです。
この疑問から、2番目の説が出てきているようです。
猪肉:ぼたん
こちらも複数の説があります。
- 猪肉を皿に盛り付けるとき、「牡丹(ぼたん)の花」のように飾ることから
- 東本願寺に「唐獅子牡丹図」という絵があり、獅子と牡丹の花がセットで描かれており、「獅子(しし)」と「猪(いのしし)」を掛けて、イノシシ肉は隠語で「牡丹肉(ぼたんにく)」
- 猪は「山鯨(やまくじら)」とも呼ばれ、クジラ肉は食べても問題ない食材だったため隠語として用いた

始めの説ですが、「ぼたん鍋」に出てくる皿に盛られた肉は、本当の「ぼたん」の花のようにきれいです。
最後の説では、猪の肉はボタンの花のように赤いから、そういわれたようです。
最後に
鹿肉の別名を見てきました。
なぜか植物の名前が付いていましたね。その説の由来についてサイトを巡ってみました。
合わせて、なぜそんな名前が付いたのかについても、その出自を見てきましたが、えらい昔に端を発していたことが分かりました!
鹿肉は食べたことはありませんが、時代小説などでは、鹿を狩って肉を食べるシーンは何度か見ています。実際はうまいらしいので機会があれば食べてみたいですね。
その他のお肉にも触れましたので、機械があれば記事に会いたいかな。
■実は、「鹿の別名」も記事にしています。こちらは、9つも別名があるんですよ。
※気づけば「別名」の記事も増えてきました
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