「いもあらい」とは一体何か?その漢字表記が面白いので追いかけた
「いもあらい」と聞くと、一般には「芋を洗う様子」や、人が密集する「芋洗い状態」を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、実は地名や名字では、「一口」と書いて「いもあらい」と読む例があります。
初見ではまず読めない難読表記ですが、京都の地名「東一口」や、東京の「一口坂」など、歴史のある場所にも残っています。
この記事では、「いもあらい」の意味だけでなく、「一口」という漢字表記の由来や、地名・名字との関係について分かりやすく整理します。
いもあらいとは?漢字では「一口」と書くことがある
「いもあらい」と聞くと、「芋を洗うこと」や「人がぎゅうぎゅうに混み合う様子」を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、実は地名や名字では、「一口」と書いて「いもあらい」と読む例があります。
初見ではほとんど読めない難読表記ですが、京都府の「東一口」や、東京都千代田区の「一口坂」など、実際の地名にも残っています。
また、名字でも「一口」と書いて「いもあらい」と読む例があり、全国には少数ながら実在しています。
つまり、「いもあらい」は単なる言葉ではなく、地名や名字と結び付いた歴史ある読み方でもあるのです。
「芋洗い」と「一口」は別の意味
「いもあらい」という読み方は同じでも、「芋洗い」と「一口」では意味が異なります。
一般的な「芋洗い」は、文字通り芋を洗うことを指します。
そこから転じて、人が密集して混雑している様子を「芋洗い状態」と表現するようになりました。
一方、「一口」と書く「いもあらい」は、主に地名や名字として使われる特殊な表記です。
普通の会話で使う「芋洗い」とは異なり、難読地名や珍しい名字として残っている点に特徴があります。
つまり、「芋洗い」は一般的な言葉、「一口」は固有名詞に近い表記であり、同じ読みでも意味や使われ方が異なるのです。
なぜ「一口」を「いもあらい」と読むの?
なぜ「一口」を「いもあらい」と読むのか、その由来には複数の説があります。
特に知られているのが、疱瘡(いも)を洗い流したことに由来する説です。
一方で、地形や表記の成り立ちに関係する説も伝えられています。
ここでは、まず疱瘡を洗い流す説を中心に見たうえで、そのほかの説も整理していきます。
- 疱瘡を洗い流す説
- そのほかの由来説
それぞれの説について、細かく見て参りましょう。
疱瘡を洗い流す説
京都に「豊吉(ほうよし)稲荷神社」があります。
この神社、東一口集落内にあり、疱瘡(天然痘)を治す力を持っていると言われています。
疱瘡を「いも」、治すことを「洗い流す」で、「いもあらい」と言われるようになったそうです!
さらに、この豊吉稲荷神社、池のほとりにあって、一方向からしか行くことができないイコール入り口が一つで「一口」となりました。
そこから、「一口」が「いもあらい」になったそうです。
その他の由来説
さて、一口の由来とされる説は、下記のようにいっぱいあります。
まずは、記録のあるものから行きます。
- 入口がひとつのみであったことから「一口」とかいた『山城名勝志』(1711年)
- 用明天皇が一口(ひとくち)川に流した短冊を淀魚市の漁師が禁裏へ届けた際「一口」を賜った『漁師由緒抜書写(東一口の山田家に伝来する文書)』(年欠)
- 土地を神から貰う神事「地貰い」が転訛し「イモアライ」になった『久御山町史』(1986年)
この他にも、以下の由来もあるんです。
- 鯉を石清水八幡宮に献上していたとき、目録に記される「一咫」を「一口」に見間違えた
- 鋳物師(いもじ)のイモから変わった
- イモは斎(いもい)・忌(いまう)に由来し、潔斎場所に由来する
- 古訓を「以毛阿良比」とし、「以毛」は斎む「阿良比」は清めるの語意で霊場地名
- イマ(今)・アラ(新)・ヰ(井)を語源とし、新しい水路を設けたことに由来
一部を除いて、「一口」が「いもあらい」につながる部分が弱いですね。
東京の一口坂と京都の東一口
この章では、東京と京都にある「一口坂」と「東一口」について見て参ります。
東京の一口坂

東京の、「一口坂」ですが、江戸で疱瘡が流行った時、この「豊吉稲荷神社」を勧進し、この神社が建った場所を「一口(いもあらい)」と称するようになったそうです。
実際、「一口坂」の坂の下に疱瘡の治癒に霊験のある一口稲荷が祀られていたと言われています。
東京都千代田区には、「太田姫稲荷神社」というのがあって、古名を「一口稲荷神社(いもあらいいなり)」と言ったそうです。
この神社のベースは、長禄元年(1457年)に太田道灌が、娘の天然痘が治癒したことを感謝し、一口稲荷神社を勧請して旧江戸城内に稲荷神社を築いたとされるモノです。
現在では、「ひとくちざか」と呼ばれているようですが、「本来は一口坂(いもあらいざか)という名称が正しい(一口坂|千代田区の文化財)」そうです。
靖国神社の近くですね!
京都の東一口
京都にも「東一口(ひがしいもあらい)」という大字があります。
現在、東一口(ひがしいもあらい)は農業集落となっていますが、漁村の面影が残されています。
国土地理院 (GSI), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
東一口集落の航空写真(2020年撮影) 左上に宇治川。右側を南北に通るのが京阪国道。その間で南北2本の水路に挟まれるのが東一口集落。
また、この「東一口」は難読地名としても知られているそうです。
普通は、「一口」が「いもあらい」なんて読めませんよね!
名字にもある「一口」
「一口」は地名だけでなく、名字としても実在します。
名字由来netで「一口」を検索した結果です。
【名字】一口
【読み】いちぐち,いもあらい,かずぐち,いっこう,ひとくち
【全国順位】 23,529位
【全国人数】 およそ170人
読み方は「いもあらい」の他、「いちぐち」「かずぐち」「いっこう」「ひとくち」と5つあり、初見では読めない難読名字として知られています。
この中で、何人の方が「いもあらい」を名乗っているのでしょうか?
全国で170人ほどいらっしゃいますが、苗字としては、大変珍しい部類に入るでしょう。
また、名字は地名から生まれることも多いため、「一口」姓も土地の名前と関係している可能性があります。
※カテゴリ「言葉の意味」の記事群を一覧にまとめた記事を新たに作成しました。
まとめ
「いもあらい」は、一般には「芋洗い」や「人が混雑する様子」を指す言葉ですが、地名や名字では「一口」と書く例があります。
「一口(いもあらい)」は、京都の東一口や東京の一口坂などに残る難読地名で、由来には疱瘡を洗い流した説など、さまざまな説があります。
また、名字としての「一口」も実在しており、「いもあらい」のほか、「いちぐち」「ひとくち」など複数の読み方があります。
単なる当て字ではなく、歴史や土地の由来が残った珍しい表記として見ると、とても興味深い言葉です。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
参考資料
東一口|ウィキペディア
バラ肉のバラって何?(講談社文庫)
一口|名字由来net









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