悲喜こもごもとは?意味・使い方・由来をわかりやすく解説
試験の合否が分かれた場面や、卒業・異動・別れなど、嬉しいこととつらいことが同時に起こる状況でよく使われます。
一方で、「悲喜交々(ひきこもごも)」との違いや、「悲喜交交」などの誤った表記に迷う人も少なくありません。
この記事では、次の観点について、国語が苦手な方でも分かるように丁寧に解説していきます。
- 悲喜こもごもの正確な意味
- 由来や言葉の成り立ち
- 正しい使い方と例文
- 「悲喜交々」との違い、よくある誤用
悲喜こもごもとは?意味をわかりやすく解説
悲喜こもごも(ひきこもごも)とは、一人の人間の心の中に、喜びと悲しみが同時に、または交互に生じることを表す言葉です。
辞書では、複数の人の感情や集団全体の状況を指す語ではないと説明されるのが一般的で、本来は個人の心境について用いられてきました。
たとえば、次のように、相反する感情が一人の中で入り混じる状態が「悲喜こもごも」です。
- 努力が報われた喜びと、失ったものへの寂しさ
- 成功の達成感と同時に湧き上がる不安
なお近年では、喜ぶ人と悲しむ人が同時に存在する場面など、状況全体を表す言い方として使われる例も見られます。
しかし、これは本来の意味から広がった、現代的な用法と考えられます。
※60爺の取り扱った言葉の意味を取りまとめた記事があります。ご覧ください。
悲喜こもごもの由来・語源
「悲喜こもごも」は、「悲」「喜」「こもごも」という三つの要素から成り立つ言葉です。
「悲」は悲しみを、「喜」は喜びを表し、正反対の感情を並べることで、人の心の中にある感情の揺れや複雑さを強調しています。
「こもごも」は、古くは「こもこも」といい、漢文訓読の際に「交・相・更」の漢字に当てられたもので、「互いに入れかわって、つぎつぎに」の意味を持っています。
古い辞書には、次のように出ているそうです。
- 大言海:此(こ)も此(こ)もの儀。これも。それも
- 文明本節用集:交 コモコモ
「准南子」にある「悲喜転面相生(悲喜転じて相(こもご)も生ず)」の訓読がもとになり、「悲喜相生(悲喜転じて相も生ず)」を経て、それを省略して「ひきこもごも」になったと考えられます。
このように、「悲喜こもごも」は、相反する感情が一人の中に重なり合う心境を、簡潔に言い表した表現です。
悲喜こもごもの正しい使い方
「悲喜こもごも」は、上記で述べたように、一人の人間の心の中に、喜びと悲しみが入り混じっている状態を表す言葉です。
これが、辞書に基づく本来の使い方です。
伝統的な使い方(辞書的用法)
もともと「悲喜こもごも」は、個人の心境について用いられてきました。
- 成功の喜びと同時に、不安や寂しさを感じている
- 願いがかなった一方で、失ったものもある
といったように、一人の中に相反する感情が同時に存在する場合に使うのが、伝統的で正確な語法です。
この用法では、複数の人の感情や集団全体の状況を指して使うことはありません。
現在よく見られる使い方(現代的用法)
一方、近年では、複数の人の感情や、その場の状況全体を表す言葉として「悲喜こもごも」が使われる例も増えています。
- 合格者と不合格者が入り混じる試験結果
- 喜ぶ人と落胆する人が同時に存在する場面
この使い方は、本来の意味から広がった、現代的な用法と考えられます。
文章で使う際の注意点
文章を書くときは、文脈や文章の性格に応じて使い分けることが大切です。
- 正確さや辞書的な意味を重視する文章 → 一人の心境について用いる
- 会話文や説明的な文章、口語的な表現 → 状況全体を表す言い方として使うこともある
特に、論文・説明文・学習用の記事などでは、本来の用法を意識して使うと安心です。
悲喜こもごもの例文
ここでは、「悲喜こもごも」の使い方が分かるよう、「本来の用法(個人の心境)」と、「現在よく見られる用法(状況全体)」に分けて例文を紹介します。
本来の使い方(個人の心境)
- 念願の目標を達成できたものの、支えてくれた人と別れることになり、悲喜こもごもの思いでその場を後にした。
- 努力が報われた喜びと、これからへの不安が入り混じり、彼の胸中は悲喜こもごもだった。
- 長年の夢がかなった瞬間、達成感と同時に虚しさも覚え、自分でも整理のつかない悲喜こもごもの感情に包まれた。
現在よく見られる使い方(状況全体)
- 試験の結果発表の日、会場は合格者と不合格者が入り混じる、悲喜こもごもの光景となった。
- 人事異動の発表を受け、部署内は喜ぶ人と落胆する人が入り混じった、悲喜こもごもの雰囲気に包まれていた。
「悲喜交々」「悲喜交交」との違いは?
「悲喜こもごも」には、よく似た表記として「悲喜交々」や「悲喜交交」があります。
ここでは、それぞれの違いと考え方を整理します。
「悲喜こもごも」と「悲喜交々」の違い
「悲喜こもごも」と「悲喜交々」には、意味の違いはありません。
「こもごも」は入り混じって・互い違いに という意味を持つ言葉で、漢字では 「交々」 と書くことがあります。
そのため、「ひらがな表記:悲喜こもごも」「漢字表記:悲喜交々」はいずれも同じ語を表しており、表記の違いにすぎないと考えて差し支えありません。
一般には、次のような文体上の違いがあります。
- 「悲喜こもごも」:読みやすく、現代的
- 「悲喜交々」 :やや文章語・漢語的
「悲喜交交」はどう考えればよいか
一方で、「悲喜交交」という表記を見かけることもあります。
ただし、現在の国語辞典では、「悲喜交交」を一般的な表記として立項しているものは多くありません。
「こもごも」という語は、伝統的にはひらがなで「こもごも」、漢字で「交々」と書かれてきました。
そのため、
- 「悲喜交交」は「悲喜交々」の表記が変化したもの
- 変換や表記の揺れによって生じた表現
と考えられることが多く、標準的な文章では避けられる傾向にあります。
文章で使うなら、どの表記が無難?
文章を書く際は、次の表記を選ぶと安心です。
- 悲喜こもごも(最も一般的で分かりやすい)
- 悲喜交々(文章語として使いたい場合)
いずれも意味は同じであり、文体や読みやすさに応じて使い分けることができます。
悲喜こもごもで注意したい表記・使い方
「悲喜こもごも」は意味を理解していれば使いやすい言葉ですが、表記や使い方の点で、いくつか注意したいポイントがあります。
やってはならない使い方は、次の3点です。
- 動詞のようには使わない
- 個人の心境か、状況全体かを意識する
- 表記は統一する
どういうことなのか、詳しく見ていきます。
動詞のようには使わない
「悲喜こもごも」は、名詞的・形容動詞的に用いられる表現です。
そのため、次のような使い方は、不自然に感じられることが多く、一般的には避けたほうがよいとされています。
❌ 悲喜こもごもする
❌ 悲喜こもごもしている
「悲喜こもごもの思い」「悲喜こもごもの心境」のように、名詞を修飾する形で使うのが自然です。
個人の心境か、状況全体かを意識する
前章でも触れたように、「悲喜こもごも」は本来、一人の人間の心境を表す言葉です。
近年では、複数人の感情や場の雰囲気を表す使い方も見られますが、正確さを重視する文章では、個人の心情を指しているかどうかを意識すると安心です。
表記は統一する
文章の中で、「悲喜こもごも」「悲喜交々」といった表記が混在すると、読者に違和感を与えることがあります。
どちらを使う場合でも、記事や文章の中では表記を統一することが大切です。
一般的には、ひらがなの「悲喜こもごも」を選ぶと、読みやすく無難です。
悲喜こもごもの類語・言い換え表現
「悲喜こもごも」と似た意味を持つ言葉はいくつかありますが、それぞれ使われる場面やニュアンスには違いがあります。
ここでは、代表的な類語と使い分けを紹介します。
| 類語 | 意味 |
|---|---|
| 悲喜交錯 | 状況や出来事の中で感情が入り交じる様子 |
| 一喜一憂 | 出来事に応じて感情が揺れ動く過程 |
| 感慨無量 | さまざまな思いが込み上げて言葉にならない様子 |
| 複雑な心境 | 上記を平易に言い換えた表現 |
以下に、上記の類語を、少し、詳しく紹介します。
悲喜交錯(ひきこうさく)
悲しみと喜びが、出来事や状況の中で入り交じっていることを表す言葉です。
「悲喜こもごも」が一人の心境に焦点を当てるのに対し、「悲喜交錯」は、状況や出来事そのものを描写する場合に使われやすい表現です。
一喜一憂(いっきいちゆう)
良いことと悪いことがあるたびに、喜んだり落ち込んだりする様子を表す言葉です。
感情の動きが外に表れやすい点が特徴で、「悲喜こもごも」よりも、気持ちが揺れ動く過程に焦点が当たります。
感慨無量(かんがいむりょう)
さまざまな思いが胸に込み上げ、言葉にできないほど深い感情を抱く様子を表します。
結果や節目の場面で、「悲喜こもごも」の到達点として用いると効果的です。
複雑な心境
喜びと悲しみが入り混じっている状態を、分かりやすく言い換えた表現です。
硬い表現を避けたい場面や、国語表現に不慣れな読者向けの文章では、「悲喜こもごも」の言い換えとして使いやすい言葉です。
まとめ
「悲喜こもごも」とは、喜びと悲しみが入り混じった複雑な心境を表す言葉です。
本来は、一人の人間の内面に生じる感情について用いるのが伝統的な語法とされています。
由来をたどると、「悲」と「喜」という正反対の感情が交互に、また同時に現れる状態を表した語であり、単なる喜怒哀楽ではなく、心の奥にある揺れや葛藤を含んだ表現であることが分かります。
近年では、試験結果の発表や人事異動など、複数の人が置かれた状況全体を指して使われる例も多く見られますが、これは本来の意味から広がった用法である点には注意が必要です。
文章を正確に書きたい場面では、個人の心境を指しているのか、状況全体を描写しているのかを意識するとよいでしょう。
また、「悲喜こもごも」は「悲喜交々」「悲喜交交」と表記されることもあり、意味に大きな違いはありません。
現在では、ひらがな表記の「悲喜こもごも」が最も一般的に使われています。
意味や使い方を正しく理解したうえで用いれば、「悲喜こもごも」は、複雑で繊細な感情を端的に伝えられる便利な表現と言えるでしょう。
参考
新明解 語源辞典 三省堂
NHK画悩む日本語 NHK放送文化研究所
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