プロ棋士の給料・年収を大解剖!トップに近づくと凄まじい!
将棋のプロ棋士、即ち、春秋の奨励会三段リーグの上位二名が晴れて四段となり棋士となります。ここから、わかるように、棋士は1年で4名しかなれない狭き門なのです。
それというのも、公益社団法人 日本将棋連盟が財政的な観点から、年間4名という制限を設けざるを得ない状況なのだと言われています。
ただ、そんな状況の中でも、日本将棋連盟の賞金ランキング(ベスト10)を見ると、2021年度のトップ渡辺明名人は 8,194万円を稼ぎ出しています。過去には、1億円を超える年もあったと記憶しています。
現在、そんな棋士たちの給料及び年収は公開されておりません。
そこで、60爺がプロ棋士の給料・年収を大解剖しちゃいます。プロ棋士の示した資料を基に、順位戦やその他の棋戦の収入を計算していきます。それからトップに君臨するプロ棋士の懐具合も見せちゃうので、よーくご覧になってください。
プロ棋士の給料・年収の考察
棋士の養成機関奨励会について多少触れましたが、奨励会は6級で入会し、26歳までに四段になれないと退会させられる厳しい掟があります(「25歳を過ぎても三段リーグ戦で勝ち越しすれば、1期ごとに28歳まで延長可能」「年齢にかかわらず三段リーグ戦に6期在籍できる」特例があります)。
上述したように、春秋のリーグ戦でトップ二名が四段になり棋士となります。プロ棋士という言葉が使われますが、将棋界では棋士=プロ棋士であるので、プロ棋士という言葉は本来使わないんですよね。
しかし、この記事の中では、あえて、プロ棋士で通していきます。
プロ棋士になると、日本将棋連盟から給与(参稼報奨金:さんかほうしょうきん と呼ぶ)が支払われるのですが、この金額を考察していきましょう。
プロ棋士の給料について
さて、プロ棋士の給料(参稼報奨金)を考察しますが、ベースは以下の資料です。
- 四段になると「参稼報奨金」(さんかほうしょうきん)と対局料が入る。
- 「参稼報奨金」の約7割が順位戦のクラスと連動している(順位戦は対局料がなく、その金額が「参稼報奨金」として支払われる。A級9局、B級1組12局、C級(1,2組)10局の各リーグ戦の対局料が毎月均等に支払われる)⇒ 順位戦の各クラスの差は、およそ7掛けとなっている。
- 他の棋戦は、1局ずつの対局料の他、契約金の一部が「参稼報奨金」に回るシステムで、各棋士の活躍度でABCのランクに査定され、それによって金額が支払われる
以上、「プロ棋士という仕事」創元社 青野照市九段著から抜粋
始めに、順位戦の「参稼報奨金」を割り出します。順位戦は、名人を筆頭に、A級、B1、B2、C1、C2のクラスがあります。
資料から、各クラスの差は7掛けになっていくと言っているため、名人を1とすると、A:0.7、B1:0.5、B2:0.35、C1:0.25、C2:0.18 となります。
名人は月100万円という情報が色々なサイトにありますので、これを基に順位戦の「参稼報奨金」を計算して表にします。
クラス | 金額 |
---|---|
名人 | 100万円 |
A級 | 70万円 |
B級1組 | 50万円 |
B級2組 | 35万円 |
C級1組 | 25万円 |
C級2組 | 18万円 |
フリークラス | 0万円 |
順位戦だけですけど、A級棋士は、さすがトップの10名だけあって、かなりの高給取りですね。それに反して、C2クラスだと新入社員位の金額なのでしょうか。
フリークラスは順位戦を指さないのですが、金額ゼロは苦しいですなア!
上述の金額が全「参稼報奨金」の7割だと言っていますので、残り3割を反映します。なお、他棋戦のランクはB査定(プラスマイナスゼロ)で計算しています。
計算方法は、順位戦の「参稼報奨金」÷ 7 × 10 ですね。この結果を反映した表が以下のモノです。
クラス | 金額 |
---|---|
名人 | 143万円 |
A級 | 100万円 |
B級1組 | 71万円 |
B級2組 | 50万円 |
C級1組 | 36万円 |
C級2組 | 26万円 |
フリークラス | 8万円 |
フリークラスの金額は、前「参稼報奨金」C2の金額から順位戦「参稼報奨金」C2の金額を引いて計算しました。
おお、名人とA級は月収100万越えですね。B2位までは、一般社会の給与と比べても良い方ではないでしょうか。
C1はそこそこ、C2はちょっと苦しいですかね。フリークラスは、「え、こんなに少ないの」と思っちゃうくらいの金額です。
プロ棋士の年収
それでは、月収を出せましたので、年収を計算してみましょう。といっても、単に12倍するだけですが。棋士にボーナスが出るという話は聞かないので…。
クラス | 年収 |
---|---|
名人 | 1,714万円 |
A級 | 1,200万円 |
B級1組 | 852万円 |
B級2組 | 600万円 |
C級1組 | 432万円 |
C級2組 | 312万円 |
フリークラス | 96万円 |
いかがでしょうか。
A級になれば、1,000万円プレーヤーですよ。名人になれば、1,500万円を軽く超えます!
この他に、賞金が入ってきたりしますから。棋戦優勝なんかすると、対局料の他に優勝賞金も入って来て、ウッハウハですが、勝てないとちょっと寂しい世界になっちゃうんですなア。
フリークラスの年収が随分悲惨ですが、与えられた情報から割り出したものなので、こんなところで許してください。
賞金ランキングトップ10
さて、標準の金額は出ましたが、プロ棋士がどれだけ稼ぐか将棋連盟の公表している「賞金ランキング」で見てみましょう。
まずは、2021年度の賞金ランキングです。
順位 | 氏名 | 獲得額 |
---|---|---|
1 | 渡辺明 名人 | 8,194万円 |
2 | 豊島将之 九段 | 8,145万円 |
3 | 藤井聡太 竜王 | 6,996万円 |
4 | 永瀬拓矢 王座 | 4,821万円 |
5 | 羽生善治 九段 | 3,236万円 |
6 | 斎藤慎太郎 八段 | 2,567万円 |
7 | 木村一基 九段 | 2,245万円 |
8 | 糸谷哲郎 八段 | 1,876万円 |
9 | 稲葉陽 八段 | 1,703万円 |
10 | 菅井竜也 八段 | 1,674万円 |
やはり、名人、竜王、王座とタイトル保持者が並んでいますね。豊島九段は無冠になったもののタイトル戦に何度も登場したので堂々の第二位です。
やっぱりトップになると、凄まじい金額を稼ぎますね!
1位渡辺明名人、2位豊島将之九段の金額は8,000万円超えです。3位の藤井聡太竜王は 7,000万弱、4位の永瀬拓矢王座が 5,000万弱も稼いでいます。
調子が悪かったとはいえ、羽生善治九段と木村一基九段もランク入りしています。あとは、A級棋士の斎藤慎太郎八段、糸谷哲郎八段、菅井竜也八段がいます。B級1組の稲葉陽八段も9位に入りました。
調子が悪くとも、羽生九段が5位で 3,236万円、ベスト7木村一基九段までが 2,000万超えです。
ちなみに。2010年度のランキングも見てみましょう。
順位 | 氏名 | 獲得額 |
---|---|---|
1 | 羽生善治名人 | 11,576万円 |
2 | 渡辺明竜王 | 6,240万円 |
3 | 久保利明二冠 | 4,829万円 |
4 | 森内俊之九段 | 3,270万円 |
5 | 深浦康市九段 | 3,173万円 |
6 | 佐藤康光九段 | 3,018万円 |
7 | 三浦弘行八段 | 2,850万円 |
8 | 藤井 猛九段 | 2,410万円 |
9 | 丸山忠久九段 | 2,372万円 |
10 | 広瀬章人王位 | 2,136万円 |
こちらも、凄まじい金額ですね!
トップは、羽生名人で1億超え!2位が渡辺明竜王で 6,000万超えです。3位の久保利明二冠が 5,000万弱です。
後は、僅差で7名が追随している図ですね。
10位の金額を2021年と比較すると、2010年の方が500万ほど多いです。
それにしても、ベスト10のメンバーを見るとガラッと変わっていることに気づきます。両方のランキングに登場しているのは、渡辺名人と羽生九段だけです。将棋界の厳しさがわかりますよね!
プロ棋士のその他の収入
さて、プロ棋士の月額給与・年収を見てきましたが、プロ棋士たちはその他にも副収入を得る道があります。
ザっと書き出すと以下のようなものです。
- 棋戦優勝(タイトル戦、一般棋戦)
- 講演
- 書籍の印税・原稿料
- 指導料
- YouTube等での収益
棋戦優勝:各スポンサーが開催しているタイトル戦で挑戦、タイトル獲得あるいは一般棋戦に優勝することで得られる賞金です。タイトル獲得、一般棋戦優勝とも、大きな賞金を手にできますね!
講演:講演会などの出演料です。メディアの露出が低い場合 30万円以下(それでも大きくない?)。有名どころだとだと 30万円を超えるようです。羽生九段位になると 100万円に届くのでは?
書籍の印税・原稿料:将棋の書籍の執筆で得られる印税、原稿料です。書籍が売れれば、そこそこの収入になります。1冊の印税(6~10%)は数十万円といわれます。
指導料:指導料に関しては、棋士の派遣料(下記記事参照)が将棋連盟で告知されています。派遣3時間以内で見ると、九段 101,000円もしますが、四段なら 39,000円でOK!棋士には半分くらい入ってくるのかしら?
YouTube等での収益:「アゲアゲ」で有名な折田翔吾四段や、伊藤真吾五段の「イトシンTV」など多くの棋士が YouTube でチャンネルを解説しています。収益は、「1再生につき0.05~0.7円」(要はチャンネルで違う)ということです。
最後に
プロ棋士の月収(「参稼報奨金」でしたね)を資料を基に類推して年収を求めてみました。
やはり、実力主義の業界では強くなることで、自らの収入を上げていくことが出来ます。そして、トップになれば、凄まじい金額を稼ぐことが出来ることもわかりました。
逆に勝てないと、給料は上がらず低迷してしまいます。そこが勝負師の厳しいところですね!
また、棋戦以外での棋士の収入源もいくつか挙げてみました。講演などもいいお金になるようですが、やはり知名度がモノを言うようです。棋士はやはり強くないといかんのですな。
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