「可愛そう」と「可哀想」どっちが正しい?意味や違いも総特集

2023年10月7日

日本語には、同じ発音ですが記載の違う言葉がたくさんあります。

60爺

本ブログでも、たびたび取り上げています。

最近の記事では、「少しずつ・少しづつ」、以前の記事では「しづらい・しずらい」等、漢字では、「おさめる」「さびしい」「たたかう」等、カテゴリ「違う」で調べると多くの記事がヒットしました。

今回も、その範疇に入る記事ですね。

対象は、「可愛そう」と「可哀想」です。さて、どっちが正しいのか、あるいは両者ともOKなのか、その意味や違いも含めて総特集します。

ゆっくりと内容をお楽しみくださいませ。

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「可愛そう」と「可哀想」どっちが正しい?

結論を述べる前に、これらの読みである「かわいそう」の意味を見ておきましょう。

広辞苑では、「ふびんなさま。同情に堪えぬさま。」と言っています。つまり、相手の不幸な状態に同情する気持ちを表します。

それでは、この意味を踏まえて、「可愛そう」と「可哀想」どっちが正しいのかから確認してまいりましょう。

「可愛そう」と「可哀想」どっちが正しい?

「可哀想」が正しい。この漢字「可哀相」とも書きます。但し、これらの表記は共に当て字です!

そもそも、「可愛そう」という日本語は存在しないんですよ!

まあ、「かわいそう」の漢字自体が当て字なので、「可愛そう」の表記もありえますが、上述した意味を踏まえると、この表記は非常に使いづらいです!

さらに、いくつかの国語辞典を引いてみましたが、予想通りというか「可愛そう」という表記を見つけることは出来ませんでした。

その結果が次の一覧です。

国語辞典可哀想可哀相可愛想備考
広辞苑××当て字
大辞林×当て字
大辞泉×当て字
日本国語大辞典×
学研国語大辞典×当て字
明鏡国語辞典×当て字

ご覧のように、「可愛想」及び「可哀相」はほとんどの辞典に載っておりました。そして、日本国語大辞典を除く国語辞典で、漢字表記は当て字であると言っています。

また、「可愛そう」の表記に近い「可愛想」が唯一、日本国語大辞典にありました。ありましたが、これ、「可哀想」の誤植じゃないんですかね?

「かわいそう」の漢字表記ですが、上述したように、その意味から考えても「可愛い」で使われる「可愛そう」はありえないと考えます。

いずれにしても、「かわいそう」の漢字表記(可哀想、可哀相)は当て字ですので、ビジネスシーンや公式な文書等で表記する場合には、「かわいそう」とひらがな表記した方が良いと考えます。

60爺

自分が書く文章で、「かわいそう」の漢字変換に悩んだら、ひらがな書きにしましょう。

なお、『共同通信社』では、「可哀相・可哀想」は原則使用せず、「かわいそう」を使っています。

ただ、『毎日新聞社』では、「可哀そう」、『朝日新聞社』では、「可哀想」を原則使用としているそうです。


「かわいそう」のルーツ

「可愛そう」と「可哀想」で始まった本記事ですが、ここに、「可哀相」と「可愛想」が乱入してきた形です。

そもそも全ての表記が当て字なんですが、なぜ、こんなことになったのかは、そのルーツにあったんです。

実は、「かわいそう(可哀想)」の語幹である「かわい(かはい)」は「かわいい(可愛い)」の語源が共通なんですよ。

次の図を見てください。

参考:新明解語源辞典

もともとのルーツと思われる語は、「かほはゆし(顔映)」でした。この語が、「かははゆし」を経て「かはゆし」となりました。

この語が、中世期末以降「かわいい」、「かわい(そう)」に分化したと考えられているんです。要は、それぞれの受け持ちが決まったのです。

意味の変遷を見ていくと、それが良くわかります。

当初、「見るに耐えぬ」(かほはゆし(顔映))という意味が、「まともに見ていられない・痛々しい・大事にしてやりたい」という意味に変化していきました。

それが、「愛らしい・不憫だ」(かはゆし)を経て「いとしい、愛すべきようすだ」(かはいい)、「不憫だ」(かわいそう)に分化したんですね。

ここから考えると、上述した「かわいそう」を「可愛そう」と書くのは不適切であることがよくわかります。

最後に

「可愛そう」と「可哀想」どっちが正しいかについて確認しました。

あまり見たことがない「可愛そう」について、「かわいそう」と読むのに時間が変わってしまいました。この読みであれば、普通は「可哀想」と書くだろうと当たりを付けて確認作業を行いました。

何で、この「可愛そう」という言葉が出てきたのかを見に行きましたが、実際、この語は日本語に存在しませんな!ただ、「可哀想」「可哀相」も当て字だと知ってビックリでした。

結局、「かわいそう」のルーツについて考えざるを得なくなり、それを見ていくと「可愛い」と「かわいそう」のルーツが一つだったことが分かり、二度ビックリでした。

イヤー、日本語は奥が深いわ!

※気づけば「○○と××どっち」の記事も増えてきました

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この記事を書いた人

60爺

60路を越え、RaspberryPi と出会い、その関係でブログ開設(2017/2~)となりました。始めてみると、コツコツやるのが性に合ってしまい、漢字の記事から家の補修・将棋・windows10関係・別名・言い方などジャンルを拡大して今に至ってます。まだまだ、元気なので新たな話題を見つけて皆様に提供できればと思っています。「プロフィールはこちら