「円」の旧字とは?その意味から歴史・パソコンでの打ち方等を総特集
日本の通貨単位として使われる「円」には、かつて異なる表記が存在していました。
その旧字とは一体何なのか、どのような意味を持ち、なぜ現在の表記へと変わったのでしょうか?
本記事では、その歴史的背景を紐解きながら、旧字体の成り立ちや変遷ついて詳しく紹介します。
また、古い文書や特定の場面で旧字を目にすることがあるかもしれません。
その際、パソコンやスマートフォンで旧字を入力する方法を知っていれば、より正確な表記が可能になります。
そこで、実際の入力方法や使用場面についても紹介します。
旧字体の「円」を知ることは、日本の歴史や言葉の変化を学ぶ上で重要なポイントです。
この記事を通して、旧字の魅力や意外な活用法を発見してみましょう。
円の旧字とは?
「円」には、旧字の「圓」があります。

円は4画、圓は13画の漢字です。
その書き順を見てください。

旧字の「圓」は、新字の「円」に比べ、はるかに難しく、しかも、ちっとも似ていませんね。
新字体の「円」は、「よくもまあ」と思うほど、旧字の「圓」を崩したものですね。
お隣の中国でさえ、「圆」までしか略していません。
円の字源
圓=「員:まるい」+「口(かこい)」で構成されています。
員=「鼎(かなえ:員は変形)」+「○(円形)」は、鼎の丸い口から発想された図形で、「圓」の原字にあたります。
ここから、「員」は、丸く取り巻いた形から「まるい」「まるい枠」「枠の中に入れる」というイメージを示す記号となりました。
ここから、「圓」は、○の形に囲む情景を示した図形となりました。
円の異体字
円の異体字には「圎」「圆」があります。
このままだと、旧字と違いが見えないかもしれないですね。旧字と異体字を続けて出してみましょう。
圓 圎 圆
サイズを大きくしてみました!
最初の異体字は、旧字の「口」の部分が「ム」になっているのが分かります。
2番目の異体字は、旧字の「貝」の部分が「冂」+「人」となっています。
この異体字Unicodeで出すことができます。
最初の異体字は、日本語で「570e」を入力して「F5キー」を押しましょう。
次の異体字は、日本語で「5706」を入力して「F5キー」を押しましょう。
他にも、異体字ではないですが、崩し字がいくつかあるようです。
日銀は円の形をしている
全然関係ないんですが、日本銀行を上空から見ると、ご覧のように「円」の形をしています。

国土地理院, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
これ、日本の通貨である「円」をモチーフにしたのかと思いきや全然違っているんです。
日本銀行の竣工(1896年)当時、日本銀行券は旧字体である「圓」の表記を用いていました。
本件については日本銀行側も、『この「円」の形は意図したものではない』との見解を示しているそうです。
圓から円への変遷
「圓」と言う文字は、平安時代にはすでに使われていたようです。
ただ、平安時代から江戸時代にかけて、書きやすさや商業の発展に伴い、徐々に略字が広まっていたようです。
この章では、この「圓」が、どのように略されて「円」に近づいて行ったかを見ていきましょう。
805-806年「三十帖策子」
弘法大師空海が唐から持ち帰った密教の秘籍の冊子本です。
国宝に指定されており、東寺ではなく、京都の仁和寺に所蔵されています。
この中で、弘法大師空海が「くにがまえ」の中に「ノ」を書く、かなり大胆な略字を用いていたようです。

平安時代の円
永承7年3月28日(1052年)に、現代に残る壮麗な平等院鳳凰堂を改修した「藤原頼通」の筆が残っています。

左の円は、「くにがまえ」+「ノ」で、上記、空海の筆よりも顕著ですね。右の円は、下の横棒がせりあがった形です。
また、北山抄(ほくざんしょう)という、平安時代中期に成立した私撰の儀式書の中で、藤原伊房の「円」がありました。

これも、下の横棒が少しせり上がってきています。
12世紀「元暦校本万葉集」
元暦校本万葉集は元暦元年(1184)に校正作業が行われた写本で、平安時代に写された『万葉集』のなかで最も歌の収録数が多いことで知られています。

この中で出てくる「円」は、最終画の横棒がせり上がってきています。
応永年間(1394~1428)「庭訓往来」
庭訓往来(ていきんおうらい)は、室町時代の往来物で1巻から成ります。玄恵著と伝えられているようです。

右ページ3行目にある文字ですが、「円」とは似ても似つかない漢字ですね。
1425年「徹翁和尚(わじょう)語録」
徹翁義亨(てっとうぎこう:1295~1369)は、南北朝時代の臨済(りんざい)宗の僧です。

左ページの4行目にありますが、「えん」とは思えない文字です。
1871年「改正補訂地方凡例録」
寛政6年(1794)に成立した、江戸時代の地方書(大石久敬著)で11巻から成ります。

右ページの3行目に関東一円の「円」として出てきましたが、「くにがまえ」を1本の線で割ったように見えますね。
次の章からは、パソコン、スマホ及びTEPRAでの旧字「圓」の打ち方を紹介します。
パソコンでの旧字「圓」の打ち方
文字変換とUnicodeによる打ち方の2つをご紹介します。
文字変換による「圓」の打ち方
それでは、文字変換による「圓」の打ち方を紹介します。
変換をかける文字は、新字と同じ読みの「えん」です。
手順は次の通りです。
- 「えん」入力
- 日本語で「えん」と入力します。

- 変換候補から「圓」を探す
- 変換キーを数度押すと変換候補が現れます。
目指す「圓」を探します。
見つけたら、クリックしましょう。

- 「圓」入力完了
- 「圓」が入力されました。

変換候補がいっぱいあって大変でしたが、なんとか打つことができました。
「えんしょう」変換の方が候補が少なくていいかなと思います。
Unicodeによる「圓」の打ち方
Unicode4桁を打ち込んで変換をかける打ち方です。
手軽ですが、Unicodeを覚えるのが面倒です。
- 「圓」入力
- 日本語で「5713」と入力します。
F5キーを押します。

- 変換候補から「圓」を探す
- 変換候補が現れますので、目指す「圓」を探します。
見つけたら、クリックしましょう。

- 「圓」入力完了
- 「圓」が入力されました。

日本語で該当のUnicodeを入力して「F5」キーを押すだけです。
Unicodeを覚えるのが面倒ですね!
スマホでの「圓」の打ち方
スマホででも「會」を出すのに、文字変換による打ち方が出来ます。
変換をかける文字は、パソコンと同じく「ひろ」ですね。
- 「えん」入力
- 日本語で「えん」と入力します。

- 変換候補をタップ
- 変換候補を表示するため、「ⅴ」をタップしましょう。

- 変換候補から「圓」を探す
- 変換候補が表示され、「圓」が見つかったらクリックします。
今回は4行目に発見しました。

- 「圓」入力完了
- 「圓」が入力されました。

以上、スマホでも問題なく「圓」を表示できました。
テプラでの「圓」の打ち方
ここでは、テプラ(TEPRA PRO SR300)における「圓」の打ち方を紹介します。
次の2つの打ち方があります。
- 文字変換による打ち方
- JISコードを指定する打ち方
これらの打ち方を手順に従って、ご紹介します。
文字変換による打ち方
パソコン・スマホと同じく、文字変換によって「圓」を表示する方法です。
入力する文字は、パソコン、スマホと同じ「えん」です。
- 「えん」入力
- 日本語で「えん」と入力します。

- 「変換」ボタン押下
- 「変換」ボタンを押して候補を表示します。

- 「圓」で「選択」ボタン押下
- 「↓」ボタンを押していくと「圓」が候補に表れますので、「選択」ボタンを押すことで表示できます。

- 「圓」入力完了
- 「圓」が入力できました。

今回は、「圓」を見つけるのに、えらく時間がを食いました。
JISコードを指定する打ち方
次は、JISコードを指定する打ち方です。
パソコンでのUnicodeを指定する打ち方と似ていますが、テプラ独自のコードを使った打ち方です。
- 「シフト」+「あ・ア」キー押下
- 「シフト」を押しながら、「あ・ア」キーを押します。
コード入力画面が表示されます。

- 「5204」入力
- コードに「5204」を入力します。
SR300の取扱説明書から「圓」を検索します。
もし、見つからない場合、そのTEPRAで「圓」を入力することは出来ません!

- 「圓」押下
- 「圓」が候補に表れますので、「選択」ボタンを押します。

- 「圓」入力完了
- 「圓」が入力できました。

コードさえわかっていたら、こちらの方がはるかに簡単ですね。
この方法を紹介した記事があります。
以下の記事では、「会」の旧字について紹介しています。合わせて、ご覧ください。
最後に
「円」にはかつて「圓」という旧字が存在しました。
本記事では、その旧字の成り立ちや、新字体へと変わった理由を詳しく紹介しました。
また、旧字体は現在も特定の場面で使用されることがあり、パソコンやスマートフォンでの入力方法も紹介しました。
旧字を適切に使うことで、歴史的な文書の理解が深まったり、伝統的な表記を正しく表現できたりします。
旧字体は単なる過去の遺物ではなく、今も文化的価値を持つ重要な要素です。
これを機に、日本の文字や通貨の歴史にさらに興味を持っていただければ幸いです。
※思えば、「漢字の旧字」の記事も増えてきたようです。
参考資料
・上級漢和辞典 漢字源 学研
・「員/圓/円」成り立ち
・「円」という文字
・圓
・円(圓)の異体字
・『日本書道大字典 日本名跡大字典』北川博邦編(1981)角川書店.
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません