「世論」の読み方は「せろん」「よろん」どっち?語源・使い分けを徹底解説
「世論」という言葉。
ニュースや新聞で頻繁に見かける重要な単語ですが、「せろん」と「よろん」のどちらが正しいのか、一瞬迷うことはありませんか?
実は、この二つの読み方にはそれぞれ歴史的な背景があり、どちらも間違いではありません。
しかし、現代の公的な場やメディアで推奨されているのは、はっきりと片方に偏っています。
この記事では、元々どちらがどう使われていたのかという語源から、NHKや新聞社が推奨する現代の正しい使い分けまでを徹底解説します。
この記事を読めば、あなたはもう「世論」の読み方で迷うことはなくなります。
どちらが正解か、そしてなぜそう読むのか、その疑問に終止符を打ちましょう。
結論:「世論」の読み方!「せろん」と「よろん」どっちも正解
「世論」という漢字を見たとき、「せろん」と「よろん」のどちらで読むべきか迷った経験はありませんか?
結論から申し上げます。
実は、「世論」は「せろん」と「よろん」のどちらで読んでも間違いではありません。
ただし、現代の日本社会においては、どちらの読み方が一般的か、あるいは公的な場で推奨されているかという点で大きな違いがあります。
この疑問に終止符を打つために、まずは現代で最も推奨される読み方からご紹介します。
公的な場では「よろん」が主流
現代のニュース報道や公的な文書、学校教育の場において、「世論」は次の読み方が圧倒的に主流となっています。
推奨される読み方: よろん
ちょっと古いんですが、平成15年(2003年)の「国語に関する世論調査」|文化庁では、世論の発音についての調査があり、「よろん」73.6%、「せろん」18.9%と出ています。
「せろん」と読むのは間違い?現代における位置づけ
では、「せろん」という読み方は完全に間違いなのでしょうか?
いいえ、「せろん」も歴史的に正しい読み方の一つです。
「せろん」は、元々中国語(漢語)に由来する読み方で、古くは学術的な文脈で使われていました。
日本の文献でも、平安時代の『日本文徳天皇実録』(852年)に「世論嗷々(せろんごうごう)」という形で使われている例があります。
現在でも辞書に掲載されており、高齢の方や伝統的な表現を使う方の中には「せろん」を使う方もいます。
しかし、現代では「よろん」が一般化しているため、「せろん」を使うと文脈によっては古風に聞こえたり、聞き間違いの原因になったりする可能性があります。
もし、あなたが「どちらを使うべきか」で迷っているなら、迷わず「よろん」を使うことを強くお勧めします。
※複数の読みがある漢字を紹介します。
⇒ 七の読み方?「なな」と「しち」の読み分けをガッチリ紹介
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「せろん」と「よろん」はどこから来た?語源と使われ方の変遷
「世論」に二通りの読み方があるのは、歴史の中で異なる時代、異なる文化背景から日本語に取り入れられたことに起因します。
語源と当初の使い分け
「社会一般の人々の意見」を指す言葉として、明治時代初期には二つの熟語が併用されました。
- 世論(せろん): 「世間」や「社会」を意味し、当初は「世間一般の自然な感情や傾向」という、より広範な意見を指しました。
- 輿論(よろん): 語源は「輿(こし)」。多くの人々が担ぐことから転じて、「公的な場で表明される、理性的で建設的な意見」という、規範的・理念的なニュアンスで使われました。
実際、昔の辞書である『大日本国語辞典(金港堂書籍)大正6~8年(1917~1919年)』には、次のように記載されています。
- せろん【世論】:世上に行はるる議論。輿論。
- よろん【輿論】:世上一般に唱へらるる議論。世論。公論。
- せいろん【世論】:世間一般の議論。輿論。
このように、昔は、「せろん」「せいろん」「よろん」は、「世論」「輿論」と表記が分けられていたんです。
漢字の歴史が混乱を招いた!
上述したように、「せろん」と「よろん」なんですが、もともと日本語に存在していたんですよ。
上記の説明にある通り、「せろん」は「世界」の「世」を用いて「世論」、「よろん」は、乗り物を表す「輿」という漢字を使って「輿論」と書いていたんです。
ところが、戦後の昭和21年に公布された当用漢字が定められた際に、「輿」という字が当用漢字から外されちゃったんですよ(後の常用漢字の改訂でも同じ扱い)。
この結果、新聞などでは「輿論」という書き方をやめて「世論」と書くようになりました。
簡単に言えば、漢字を書き換えたわけですが、「世論」を「よろん」と読むか「せろん(せいろん)」と読むかは読者の自由に任されたんだそうです。
一方、放送ではどうだったかというと、当時はラジオだけの時代だったので、文字にとらわれる必要はなかったんです。
そのため、何ら問題は無かったと言えるでしょう。
テレビが登場することで、「よろん」を文字で書くことが必要になりましたが、書き方は「世論」とするほか手がなかったんですな。
放送・新聞各社の見解:公的な推奨が「よろん」を決定づけた
当用漢字が定められたことで、「輿論」は「世論」と書くしかなく、NHKを始めとする公的なメディア機関が「よろん」を推奨・採用したことが、この読み方を確固たるものにしました。
実際、「世論」は英語で「public opinion」と訳されるケースが多く、「public」(国民一般/大衆)の「opinion」(意見)という意味から、ニュアンスとしては、上記の輿論(よろん)に近いと言えそうです。
これで迷わない!「せろん」と「よろん」の使い分けガイド
「せろん」と「よろん」のどちらも間違いではないと理解しても、「実際にどちらを使えばいいの?」という疑問が残るはずです。
現代の日本語において、使い分けの基本は、下記のように非常にシンプルです。
| シーン | 読み方(推奨) | 理由 |
|---|---|---|
| 現代の政治・ニュース | よろん | 国民全体の集合的な意見 |
| 学術的・古典的文脈 | せろん | 昔ながらの「世間の評判・議論」というニュアンスを強調したい場合。ただし、現代では稀。 |
「よろん」を使うべきシーンと例文
現代社会において、「世論」を使う99%のシーンで「よろん」が適切です。
特に、以下のシーンでは必ず「よろん」を使いましょう。
政治・社会問題に関する報道や議論
国の政策や、社会的な出来事に対する国民の意見を指す場合は「よろん」です。
例文を示します。
- 首相は世論(よろん)の動向を注視し、政策決定の参考にすると述べた。
- アンケートの結果、増税反対の世論(よろん)が多数を占めていることが判明した。
ビジネス・マーケティング
特定の製品やサービスに対する大衆の反応や評判を指す場合も、上記と同様「よろん」となります。
- 新商品のプロモーションにより、肯定的な世論(よろん)が形成されつつある。
現在「せろん」が使われる特殊なシーン
「せろん」という読み方は、現代では非推奨とされることが多いですが、以下のような特殊な場面では使われることがあります。
- 古い文献や学術的な議論: 過去の文献を音読したり、古典的な研究テーマを扱う場合
特定の慣用表現: ごく一部の専門的な文脈で、昔ながらの「世間の評判・論議」の意味合いで使われる場合があります。
【重要】 迷ったら「よろん」を選んでおけば間違いはありません。
最後に
「世論」の読み方が「せろん」「よろん」どっちが正しいのか見てきました。
こたえは、まさかの「どっちも合ってる」でした。
昔は、世論は「せろん」で、よろんは「輿論」という漢字があったんですねえ!
で、戦後に公布された当用漢字に「輿」の字が無くなったため、「世論」と書くしかなくなっちゃったんです。
昔は、おおらかで、どっちで呼んでもいいよーなんて言ってたから、現在の混乱につながってるような気がします。
今は、「よろん」が80%とだいぶ優勢になっており、「せろん」は衰退していく流れでしょうね。
参考
平成15年度「国語に関する世論調査」の結果について(文化庁)
NHKことばのハンドブック 第2版
※気づけば言い方・呼び方・読み方の漢字の記事も増えてきました








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