ヤモリの漢字は全6種類!ピッタリの表記と驚きの表記が混じってる
夜になると、どこからともなく現れて、旺盛な食欲で害虫を食してくれるヤモリについて、最近二つの記事をアップしています。
その中で、ヤモリの縁起に繋がる「漢字表記」を記載していますが、他にもヤモリの漢字表記があることを知りました。
それらの漢字表記の中には、記事で紹介した漢字表記の他に中国伝来のモノがあり、その漢字表記は日本のヤモリには似つかわしくないものでした。
それらのヤモリの漢字表記がどんなものか、そして、漢字表記の由来がどうなっているのか見ていきますので、是非お付き合いをお願いします。
ヤモリの漢字は全部で6種類!
ヤモリを漢字で表すとどんな文字を書くのか調べてみたところ、何と、6種類の文字が出てきました。
それでは、ヤモリの漢字表記を見ていきましょう。
ヤモリの漢字表記は?
次の6種類が見つかりました。
- 家守
- 屋守
- 矢守
- 宮守
- 守宮
- 壁虎
1番目~4番目の漢字表記には、2文字目が「守」です。1文字目がそれぞれ異なった漢字で、順に「家」、「屋」、「矢」及び「宮」が付いています。
5番目の漢字は、「守」+「宮」です。「守」が1~4と違い先頭に来ています。
そして、最後の漢字は、全く異なるものですね。「壁」に「虎」ですね。これで、「ヤモリ」と読むんですね。
現在、これらの漢字は、本当に使われているのでしょうか?
「ふりがな文庫」※で見てみました。すると・・・!
- 守宮 66.2%
- 壁虎 12.2%
- 家守 8.1%
- 宮守 6.8%
- 屋守 6.8%
おお!上に掲げた6種類のうち5種類が小説で使われていることがわかりました。それぞれの漢字ごとに例文が載っているので問題ありません。
「矢守」だけ、仲間外れになってしまいました!この漢字表記は一般的ではないということですね。
※ふりがな文庫は、漢字に対するよみの使用頻度、よみに対する漢字の使用頻度がわかるサイトです。主に文学作品などのふりがなを対象としています。
この辞典で「やもり」を調べると、漢字表記として「守宮」が現れました!
漢字ペディアでは、「守宮」がヤモリの漢字として表示され、表記として『「家守・壁虎」とも書く。』と記されています。
日本では、異字同訓語(異なる漢字でありながら、意味の近い語が、訓で読む場合に同じになるもの。ex.「足・脚」「堅い・固い・硬い」の類)や、今回の動物の名称のように、同じ対象に複数の漢字表記を当てることがままあります。
以前のトンボの記事では、漢字表記は3種類でした。ヤモリの漢字表記は、トンボより3つ多い!
「家守」の由来
60爺は、6種類ある漢字のうち、これが一番ヤモリにあっているのかと思っていましたが、上記「ふりがな文庫」では第三位で、次の例文が載っています。
「あの人は物の汚點か家守見たいな人で、何處に居るかわかりやしません。鐵砲は撃てさうもないが、下手人の姿くらゐは見て居るでせうよ」
銭形平次捕物控:222 乗合舟 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
引用:ふりがな文庫 ヤモリ
1文字ずつ漢字の意味を見ていきましょう。
家:この漢字の意味は、『人間が居住する固定式あるいは移動式の建物のこと(wiki)』と出ています。
守:この漢字の意味は、『守備とか、護衛等の「まもり・もり」』と考えるのが妥当です。
素直に読めば「家を守る」になります。
この表記から、ヤモリが、昔から『家を守る』『家庭円満』の象徴になり、縁起のいい生き物となったんですね。
「屋守」の由来
次は、「屋守」です。上記「ふりがな文庫」では第五位で、次の例文が載っています。
塀へ屋守のやうにへばり着く八五郎の肩を踏んで、平次は塀越しに外を眺めてをりましたが、やがて靜かに降りると、ポンポンと八五郎の肩のあたりを拂ひながら言ふのです。
銭形平次捕物控:210 飛ぶ女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
引用:ふりがな文庫 ヤモリ
こちらも一文字ずつ見ていきましょう。
屋:この漢字の意味は、『家、家屋、建物(新漢和中辞典)』と出ています。
守:この漢字の意味は、『守備とか、護衛等の「まもり・もり」』と考えるのが妥当です。
この表記も、「家守」と同じく「家を守る」という意味ですね。「家守」と同様に、この表記から、ヤモリが、昔から『家を守る』『家庭円満』の象徴になったということです。
この漢字表記は、「家守」と同様、まさに名は体を表すに通じますね。なかには、そうではない漢字表記の動物もいるんですよ。
「矢守」の由来
3番目の漢字も上記2つに似ていて、最初の文字が「弓矢」の「矢」になっています。
矢:この漢字の意味は、『や。弓につがえて射るもの(漢和ペディア)』と出ています。
守:この漢字の意味は、『守備とか、護衛等の「まもり・もり」』と考えるのが妥当です。
この表記は、素直に読んでも何のことだかわからなくなります。
この文字は、「家守」と同じく「家を守る」という意味なんですが、武家で用いる際、「家」を「矢」に置き換えたものと思われます。
出典を探したのですが、残念!見つけることが出来ませんでした^^;
「守宮」の由来
この文字は、中国から渡ってきたものです。
上述したように、「三省堂国語辞典」、「漢字ペディア」とも、この文字を「やもり」の漢字表記としています。上記「ふりがな文庫」では堂々のトップで、例文が 50 載っていますが、そのうちのひとつを紹介します。
下人は、守宮のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
引用:ふりがな文庫 ヤモリ
守:この漢字の意味は、『守備とか、護衛等の「まもり・もり」』です。
宮:この漢字の意味は、『宮殿、御殿(新漢和中辞典)』と出ています。
この表記は、中国の漢方薬から来ているそうです。
古代中国で、皇帝たちの住む宮中の女官の貞操を守るために、ヤモリを材料にした漢方を用いたところから「守宮」と書くようになった
もう一つ、別の由来があります。
宮廷に潜んで害虫を捕ることから守宮となった
こちらは、本来のヤモリの生態から来たものです。どちらが本当なのでしょうか?
「宮守」の由来
この漢字表記は、上述「守宮」を逆転させたものですので、意味は、「守宮」と同じです。
上記「ふりがな文庫」では第四位で、次の例文が載っています。
鼠ほどもある宮守の絶え間なく這い廻っている……そうした何ともたとえようない寂しい儚ない浅ましい景色を、圓朝は目に描かないわけにはゆかなかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
引用:ふりがな文庫 ヤモリ
「壁虎」の由来
この文字も、中国から渡ってきたものです。
「漢字ペディア」で、追加表記として、この「壁虎」が表示されています。上記「ふりがな文庫」では第二位で、次の例文が載っています。
というのは、蛇ばかりでなく、人形の腹には壁虎が一匹やっぱり釘づけになって生きている。よっぽど執念ぶかい奴の仕業に相違ありませんね
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
引用:ふりがな文庫 ヤモリ
壁:この漢字の意味は、『家の柱と柱の間の土で塗り固めた部分。かべ』です。
虎:この漢字の意味は、『とら。ネコ科の哺乳(ホニュウ)動物』です。
中国では、壁に張り付いて虎のように静かにたたずみ、あっという間に虫を食べるヤモリの姿を見て、この表記を与えたのです。
この表記を始めてご覧になった方が、読みが「ヤモリ」であるとは思わないでしょう。
まさしく、中国風(どこが?^^;)。日本では、こういう驚きの発想はできないです。
海外ではどんな名前
海外では、ヤモリはどんな名前なんでしょうか。
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
英語 | gecko | ゲコゥ |
ドイツ語 | Gecko | ゲコ |
オランダ語 | gekko | ゲコ |
フランス語 | gecko | ジェイクゥ |
イタリア語 | geco | ジェイコ |
スペイン語 | geco | ゲコ |
ポルトガル語 | lagartixa | ラガチィシャ |
スウェーデン語 | gecko | ゲッコ |
ノルウェー語 | gekko | ゲッコ |
中国語(繁体) | 壁虎 | ビイフウ |
中国語(簡体) | 壁虎 | ビイフウ |
ロシア語 | геккон | ニクコン |
ドイツには、Wiesmann(ヴィーズマン)という自動車会社があって、エンブレムにヤモリが使われており、開発した車が、まさに「Gecko」と名付けられています。

表記を見てみると、ヨーロッパではポルトガルを除いて皆似ていますね。音声も、フランス、イタリアがちょっと違いますが似たような発音でした。
中国語は、二つとも同じ表記で発音も同じでした。
皆さんも確認してみてください。
複数の漢字表記を持つ物体について
ヤモリは6種類もの漢字表記を持っていましたが、同様に複数の漢字表記を持つモノがあります。ここでは、そんな記事を紹介します。
漢字表記は3種類と少ないですね。益虫ですが独特の形をしています!
こちらは、ヤモリよりも多い8種類の漢字表記を持つものです。動植物ではないですよ。食べるとスタミナ抜群です。
中国では香りのよいお茶として好まれています。複数の表記を持ちます。
最後に
ヤモリを漢字で書いたときの例を5つ挙げてみました。家を守るヤモリのイメージに合った漢字表記が2つ(家守、屋守)ありました。
ここから、武家において「矢」を用いた「矢守」が生まれてきたと思われます。
残りの2つは中国から渡ってきました。
何と、宮殿の女官を守るための漢方にヤモリが使われていたとは思いませんでした。もう一つの「壁虎」も、日本人では思いつかない表記だと思います。
※気づけば動物の漢字の記事も増えてきました
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