巴は名前に良くない?そんな6つの意見に前向きに対応してみた
「巴(ともえ)」という漢字は、古風で優美な印象を持ちながらも、どこか力強さや独自の美しさを感じさせます。
その一方で、名前に使うことについては「少し気になる」という声もあるようです。
言葉や文字の意味は時代や文脈で変わり、多様に受け取られるものです。
たとえ、否定的な見方があっても、その内容をよく理解すれば、全く違う一面が見えてきます。
本記事では、よく語られるいくつかの意見を丁寧にひもときながら、「巴」という漢字の本来の意味や魅力を見直していきます。
名付けに迷っている方が、より前向きな判断ができるようにお手伝いします。
どうか、最後まで、ご一緒にご覧ください。
巴という漢字
始めに、「巴」という漢字の読み方から意味・成り立ち・漢字のイメージを確認しましょう。
| 部首 | 己(おのれ・き・つちのと) |
| 画数 | 4画 |
| 音読み | ハ |
| 訓読み | (日本語のみ)ともえ |
| 意味 | ①大蛇 ②平らに腹ばいになる ③地名。四川省重慶を中心に長江・嘉陵江流域一帯 ④姓の一つ |
| 日本語だけ | ともえ。射手の肘につけた鞆(皮)に描いた絵模様 |
この漢字の部首は、「己」(屈曲して目立つ印の形)で、己・巳・巻・巷などが含まれます。
意味は4つあり、①の大蛇ですが、象をも食べる伝説上の「巴蛇(ハジャ)」という大蛇を指しているようです。
日本語だけの意味では、後に、水のうずを巻いて絡み合った模様をいい、陰陽和合の「しるし」となりました。
Tomoe.jpg: http://en.wikipedia.org/wiki/User:Mitsukaiderivative work: chris 論, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
太鼓に配された三つ巴
陰陽和合は、「陰・陽の二気が合わさって万物を造化・創成すること」を言います。
また、この「巴」は、人名にも用いられます。
平家物語の登場人物の一人である「源義仲」の妻に巴御前という、当時では珍しい女性の武者がいましたよね。




次は、巴の成り立ちです。
巴の篆文は、次のような形(巴|白川フォント)で、ある種の爬虫類を描いた図形(とぐろを巻く形)と言われています。




そして、これが、先ほど出た、「山海経」に出てくる巴蛇とされています。
ただ、「色」や「邑」に構成されている「巴」の形は、「ひざまずく人」と考えられているため、「巴」も、そのように考える方が良いという意見もあるようです。
また、巴は「平ら」というイメージがあって、地面に平らにべったりくっついて這う蛇に結び付けたようです。
巴という漢字のイメージ
「巴」という漢字には、独特の丸みと流れるような形があります。
その姿は、既に述べたように、うずまきを描いたモノで、古くから「力の流れ」「自然の循環」「調和」を象徴する文様として使われてきました。
特に、神社の屋根瓦や家紋などに見られる「巴紋」は、水や風のエネルギーを表し、災いを防ぐ守りの印ともされてきたほどです。
そのため、「巴」は、ただの形ではなく、自然と人とのつながりや、陰と陽のバランスを象徴する意味を持っています。
見た目の印象も柔らかく、丸い曲線が優しさや包容力を感じさせます。
一方で、力強く渦を巻くような形から、生命力や動的なエネルギーを連想させる面もあり、静と動の両方を兼ね備えた不思議な魅力のある漢字です。
伝統と個性を併せ持つ「巴」は、穏やかさと強さを象徴する、非常に奥深い文字といえるでしょう。
巴は名前に良くないのか
巴という漢字について見てきましたが、日本語としての意味には大変いい内容があったと思います。
しかし、その意味には、ちょっと気になる内容もありました。
巴に対する否定的な意見をネットを中心に拾い上げてみたので、60爺の寸評と共にご覧ください。
| 否定的意見 | 60爺の寸評 |
|---|---|
| キラキラネームになるから | 漢字に勝手な読みを作らなければ問題になりません |
| とぐろを巻いた蛇が由来で名前として不適切 | 限定的な連想で全面否定するのは不合理です |
| 男女の交わりを意味する漢字で子供の名前に不適切 | 陰陽和合の意の一面のみを取り上げた意見です |
| 「ともえ」「は」等、読み方が複数ある漢字だから | どの漢字も同じで大騒ぎする問題ではありません |
| 巴を使った名前は読みにくく子供にストレスがかかる | 読みやすさだけで名前を評価するのは視野が狭いといえます |
| 「三つ巴」という争いを表す言葉に使われる漢字だから | 一部の使われ方だけを取り上げて判断するのは不当でしょう |
6つの否定的意見が出てきましたが、今まで取り上げてきた意見と同様で、一面のみを取り上げた視野の狭い考え方が多いようです。
それぞれの意見について、少し詳しく見ていきましょう。
キラキラネームになるから
この意見は、ほぼ、全ての漢字で出てきますが、漢字のせいではありません。
漢字の読み方を申請する必要がないところに目をつけた、ちょっとおかしな方々が勝手に読みをつけたから始まったモノです。
ですから、たとえば、巴愛灯(はあと)、虹巴(いろは)、彩巴(いろは)などとすれば、立派なキラキラネームが出来上がります。
せめて、大切な我が子には、ちょっと辞書を調べて、正しい読みをした名前を付けてあげましょう。
ちなみに、常識を外れたキラキラネームは、役所で拒否される時代になってきていますよ。
とぐろを巻いた蛇が由来で名前として不適切
巴は、とぐろを巻いた蛇の形からできた漢字で、これは、邪気が集中した状態であり、子どもの運気に悪影響を与えるというのが、この意見の要です。
そもそも、とぐろを巻いた蛇イコール邪気が集中した状態であるという裏付けがどこにもないのです。
「巴」は、見てきたように、水が渦を巻いて絡み合った形を表す美しい漢字です。
名前は、字義だけで評価されるものではなく、響き・由来・組み合わせで受け止められ方が変わります。
限定的な連想で全面否定するのは合理的でなく、由来や意図を伝えることで正確さが増すのです。
男女の交わりを意味する漢字で子供の名前に不適切
これ、巴が「陰陽和合のしるし」として使われることから、陰陽和合をイコール男女の交わりだと言い切って、名前には不適切だと言っているのです。
そもそも、陰陽和合とは、陰・陽二気の相互作用によって、万物が生成されることを表しており、イコール男女の交わりではありません。
陰陽和合が転化して、「男女の交わり」の意になっていますが、一面的な捉え方にすぎません。
本来の「巴」は、対立するものが調和して全体を成すという、むしろ吉祥的な意味を持つ文様です。
名前に込める思いが穏やかさや調和、つながりといった前向きなものであれば、むしろ「巴」はふさわしい漢字といえるでしょう。
「ともえ」「は」等、読み方が複数ある漢字だから
読みが複数あると、名前が間違えられないかという懸念がありますが、このことは必ずしも不利ではありません。
「椛は名前が良くない」でも、同様の指摘がありましたが、これこそが文化的な豊かさや表現の自由を支えています。
正式な読みを、名札・挨拶などで一度示せば周囲は慣れますし、家族が由来や読み方を伝えることで、むしろ、個性や話題になるでしょう。
読みの混乱は情報の提示と周囲の慣れで解消でき、子どもの負担を過大に見積もる必要はありませんね。
巴を使った名前は読みにくく子供にストレスがかかる
どの漢字でも同じですが、名前は、初めは読みにくくても、周囲に浸透すれば自然に覚えられるものです。
さらに、名前の読みやすさは、使う漢字だけでなく、組み合わせや読み方の工夫によって大きく変わります。
親しみやすい読みをあてたり、響きの良い名前にしたりすれば、覚えやすく心地よい印象を与えることもできます。
名前は一生を通じてその人の個性を形づくる大切な要素であり、読みやすさだけで評価するのは視野が狭いといえます。
むしろ、思いを込めた名前なら、少し珍しい名前でも、子どもにとっても誇りとなるでしょう。
「三つ巴」という争いを表す言葉に使われる漢字だから
この意見は、「三つ巴」という一部の使われ方だけを取り上げて判断している点が極端ではないでしょうか。
すなわち、一つの言い回しだけで「良くない」と決めつけるのは正確ではありません。
名付けは、文字の意味だけでなく、響きや家族の思い、全体のバランスなどを含めて考えるものです。
その点を踏まえれば、「巴」という漢字も十分に素敵な名前に使えるといえるでしょう。
巴を名前に使う際のポイント
「巴(ともえ)」を名前に使う際には、その独特な形と歴史的背景を踏まえ、意味や響きをバランスよく活かすことが大切です。
まず、意識したいのは、漢字のもつ象徴性です。
「巴」は古くから、渦や流れのように「調和」「循環」「つながり」を意味する文様として親しまれてきました。
そのため、名前に用いると「穏やかに人と調和する」「人生の流れに柔軟に寄り添う」といった前向きな印象を与えます。
読み方は「ともえ」「は」「とも」など複数ありますが、どの読みも柔らかく優しい響きを持つため、和風の名前や古風な名前との相性が良いです。
また、「巴」は字形が美しく、丸みを帯びたデザインから、筆跡や印字でも上品な印象を与えます。
名付けでは見た目の印象も重要な要素の一つです。
もし、珍しさや個性を求める場合でも、「巴」は古風ながらも決して重すぎず、現代の名前にも自然に馴染みます。
巴には、以下のような願いを込めることができます。
- 周囲と協調し、穏やかに人と関わる力を持つように
- 環境の変化に負けず、自分らしく成長してほしい
- 外見の美しさだけでなく、心の調和や内面の豊かさを大切にしてほしい
巴のつく名前の例をいくつか挙げてみます。
- 男の子:巴弥(ともや)、都巴佐(つばさ)、巴耶斗(はやと)、巴春(ともはる)
- 女の子:巴(ともえ)、巴琉(はる)、巴子(ともこ)、巴佳(ともか)、涼巴(すずは)
どちらかというと、「巴」は、女の子向けの感じかなとは思います。
巴が名前につく有名人
| 有名人 | 読み | 職業 |
|---|---|---|
| 井澤愛巴 | いざわあいは | 気象予報士 |
| 板垣巴瑠 | いたがきばる | 漫画家 |
| 岩崎巴人 | いわさきはじん | 日本画家 |
| 北川陵巴 | きたがわりょうは | アイドル |
| 纐纈琴巴 | こうけつことは | アナウンサー |
| 里村紹巴 | さとむらじょうは | 歌人 |
| 土屋巴瑞季 | つちやはずき | ファッションモデル |
| 中村巴奈重 | なかむらはなえ | 作曲家 |
| 橋本一巴 | はしもといっぱ | 戦国武将 |
| 山根巴 | やまねともえ | 文学研究者 |
巴のつく有名人ですが、そんなにいないだろうと思っていましたが10名が並びました。
戦国武将から、アイドル、文学研究科と幅広い分野に及びました。
「は」という読みが7名と圧倒的に多く、「は」の派生である「ば」と「ぱ」が1名ずつ、「ともえ」が1名という結果です。
最後に
巴という漢字について、名前に良くないという噂を聞き、執筆を開始しました。
始めに、巴という漢字について情報を提供しましたが、巴は、ある種の爬虫類、巴蛇が原型で、大蛇という意があることもわかりました。
ただ、日本では、水のうずを巻いて絡み合った模様をいい、陰陽和合の「しるし」となったことがわかりました。
それを踏まえて、巴が名前に良くない理由を集めたところ、やはり、蛇の意があるとか、悪い言葉に使われているなどの、悪い意を必要以上に取り上げているモノが複数挙がっています。
名前は、その漢字の持つポジティブな面が子どもに反映されるよう願いを込めるモノです。
その点を間違えずに考えていきたいですね。
参考
上級漢和辞典 漢字源 学研
部首ときあかし辞典 研究社
「巴」の意味や由来は?名前に込められる思いや名付けの例を紹介!|トモニテ
※気づけば「この漢字は名前に良くないのか」の記事も増えてきました













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