草冠に任の漢字は「荏」!読み方・意味・成り立ちを解説
「草冠に任」と書く漢字を、駅名の「荏原中延」で見かけたことがあります。
「任」は読めても、草冠が付くと何と読むのか迷いますよね。
草冠に「任」と書く漢字は「荏」です。
「荏」は主に「え」と読み、エゴマを表すほか、「やわらかい」「力が抜けて弱々しい」という意味を持っています。
この記事では、「荏」の読み方や意味、成り立ち、使われている言葉や苗字について見ていきます。
草冠に任の漢字「荏」の読み方と意味
草冠に「任」と書く漢字は「荏」です。
「草冠に任せる」と表現されることもありますが、正確には草冠の下に「任」を置いた字形です。
まずは、「荏」の基本情報を確認しましょう。
荏
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 部首 | 艸部(くさかんむり) |
| 画数 | 9画 |
| 音読み | ジン、ニン |
| 訓読み | え、やわ(らか) |
| 意味 | エゴマ、やわらかい、力が抜けて弱々しい、じわじわとしている |
| 漢字の種類 | 表外漢字・JIS第1水準漢字 |
「荏」は常用漢字ではありませんが、地名や苗字の「荏原」、植物名の「荏胡麻」などで目にすることがあります。
「荏」の読み方
「荏」の音読みは「ジン」「ニン」、訓読みは「え」「やわらか」です。
一般には、「荏胡麻(えごま)」や「荏原(えばら)」のように「え」と読む例がよく知られています。
熟語では、「荏苒」を「じんぜん」、「荏弱」を「じんじゃく」と読みます。
「草冠に任せる」の読み方を探している場合も、該当する漢字は「荏」で、代表的な読み方は「え」です。
「荏」の意味
「荏」には、植物のエゴマを表す意味があります。
エゴマはシソ科シソ属の一年草で、「荏」はその古い呼び名です。

茎は四角形で白い毛があり、秋になると白い花を咲かせます。
種子からは油が採れ、食用や薬用などに利用されてきました。
もう一つは、「やわらかい」「力が抜けて弱々しい」という意味です。
さらに、物事が少しずつ進む様子や、月日が何もしないまま過ぎていく様子も表します。
この意味は、「決断できないまま月日が過ぎること」を表す「荏苒(じんぜん)」という言葉に残っています。
「荏」の書き順
「荏」は全部で9画です。

最初に3画で草冠を書き、その下に6画で「任」を書きます。
「任」は、左側のにんべんを書いてから、右側の「壬」を書く順番です。
書くときに注意したいのは、「任」の右側を「王」にしないことです。
「壬」は、最初の横画に当たる部分を左上から右下へ向かうように書き、その後に横画、縦画、最後の横画を書きます。
草冠と「任」を上下の中心にそろえ、下の部分をやや縦長にすると、全体のバランスが整います。
「荏」の漢字の成り立ち
「荏」は、植物に関係することを表す「艸(くさかんむり)」と、主に音を表す「任」を組み合わせた形声文字です。
「任」は「まかせる」という意味で使われていますが、「荏」では、その意味をそのまま加えたものではありません。
「漢字源」では、「任」を構成する「壬」に「ふくらむ」という意味があり、「荏」は隆起してふくれた実をつける草を表すと説明されています。
一方、「学研漢和大字典」では、「壬」はやわらかく包み込む意味を含み、「荏」は種をやわらかく包み込んだ植物を表すとされています。
細かな解釈には違いがありますが、いずれも「荏」は植物を表す草冠と、音を示す部分を組み合わせてできた漢字です。
「任せること」とエゴマの意味が直接結び付いてできた漢字ではありません。
※草冠に〇で構成される漢字の記事の中で紹介しています。
「荏」のつく言葉
「荏」は、植物のエゴマを表す言葉のほか、「やわらかい」「弱々しい」「物事が進まないまま時間が過ぎる」という意味を持つ言葉に使われています。
代表的な言葉を見てみましょう。
| 言葉 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 荏胡麻 | えごま | シソ科シソ属の一年草 |
| 荏の油 | えのあぶら | エゴマの種子を搾って採った油 |
| 荏苒 | じんぜん | 物事が進まないまま、月日が次第に過ぎること |
| 荏弱 | じんじゃく | やわらかく、弱々しいこと |
「荏胡麻」は名前に「ゴマ」と付きますが、ゴマ科のゴマではなく、シソ科の植物です。
「荏」はエゴマの古名で、種子から採れる油は、古くから食用や灯火、防水用などに利用されてきました。
「荏苒」の「荏」と「苒」には、どちらにも物事が少しずつ進むという意味があります。
そこから、「荏苒」は何もしないまま月日が過ぎることや、物事が延び延びになることを表します。
一方、「荏弱」は、「荏」が持つやわらかく力のないという意味を用いた言葉です。
■草冠の漢字で植物を表す漢字をいくつか紹介しています。
「荏」は名前に使える?
「荏」は、子どもの名前には使えない漢字です。
戸籍に登録する子どもの名前には、原則として常用漢字または人名用漢字を使用します。
「荏」は常用漢字にも人名用漢字にも含まれていないため、出生届に記載する名前には使用できません。
ただし、名前に使えない漢字であっても、昔から存在する苗字には使用されています。
「荏」のつく苗字
「荏」は、「えばら」と読む荏原をはじめ、さまざまな苗字に使われています。
代表的な苗字と読み方を見てみましょう。
| 苗字 | 読み方 |
|---|---|
| 荏原 | えばら、えはら |
| 荏田 | えだ |
| 荏草 | いぐさ、えくさ |
| 荏柄 | えがら |
| 荏畑 | えばた、えはた |
| 荏本 | えのもと、えもと |
| 荏隈 | えのくま |
| 荏開津 | えがいつ |
苗字に使われる「荏」は、主に「え」「い」「えの」と読まれます。
なかでも「荏原」は、東京都品川区の地名や荏原町駅、荏原中延駅などで目にする機会のある苗字です。
「荏開津」は「えがいつ」と読む珍しい苗字です。
「荏」のつく苗字には、文字から読み方を推測するのが難しいものもあるため、それぞれの苗字ごとに読み方を確認する必要があります。
まとめ
「草冠に任」と書く漢字は「荏」です。
音読みでは「ジン」「ニン」、訓読みでは「え」「やわらか」と読みます。
「荏」はエゴマを表すほか、「やわらかい」「力が抜けて弱々しい」「じわじわとしている」という意味を持つ漢字です。
荏胡麻は「えごま」、荏苒は「じんぜん」、荏弱は「じんじゃく」と読みます。
「荏」は常用漢字にも人名用漢字にも含まれていないため、子どもの名前には使えません。
一方、苗字には使われており、荏原、荏田、荏畑、荏本、荏開津などがあります。
「草冠に任」や「草冠に任せる」と表現される漢字を見かけたら、「荏」という字を思い出してください。
参考資料
上級漢和辞典 漢字源 改訂第六版(学研)
※気づけば草冠の漢字の記事も増えてきました










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