天使の階級とは?9つの天上位階と意味をわかりやすくご紹介

私たちが「天使」と聞いて思い浮かべるのは、光の翼を持つ純白の存在。

しかし、聖書や神秘思想の世界では、天使たちは一様ではなく、「厳密な階級」によって役割が分けられています。

最も神に近い「熾天使(セラフィム)」から、人間を導く「天使(エンジェル)」まで、その階層は9つにも及び、宇宙の秩序を保つために綿密な仕組みで構成されています。

なぜ、天使に階級があるのか?

それぞれの階級はどんな意味を持つのか?

本記事では、古代神学から現代スピリチュアルまでを横断しながら、天使の9階級の全貌をわかりやすくご紹介します。

あなたの守護天使が、どの階層に属するのかも見えてくるかもしれません。

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天使の階級とは?その起源と基本構造

「天使の階級」とは、神の意志を秩序立てて伝えるために設けられた「天上のヒエラルキー」です。

聖書の中では天使の存在がしばしば語られますが、実際に「9つの階級」として体系化されたのは6世紀頃、神秘思想家ディオニュシウスによる著作『天上位階論(Celestial Hierarchy)』が起源とされています。

彼は、天使の世界にも人間社会と同じように秩序があり、それぞれの位階が特定の使命を持って働くと説きました。

上位の天使ほど神の光に近く、下位の天使ほど人間に近い位置から導きを与えるという構造です。

この階級は大きく3つのグループに分かれます。

最上層(上位三隊)神の直接の光を受け取る存在
中層(中位三隊)宇宙の秩序や天界の運行を司る
最下層には(下位三隊)人間や地上世界に最も近い

こうした階級構造は単なる上下関係ではなく、神の意志が段階的に世界へ流れ込む「秩序の流れ」を象徴しています。

つまり、天使たちは神の光をそのまま地上へ届けるための中継者でもあるのです。

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天使の9階級一覧

天使の階級は、下記の表に示すように9種類に分かれます。

以下では、それぞれの役割と象徴を簡潔に紹介します。

第1位:熾天使(セラフィム)

熾天使は「してんし」と読み、「熾」は「火が盛んに燃える」の意で、神への愛と情熱で体が燃えていることを表しています。

熾天使(セラフィム)

神の愛と浄化の象徴で、最も神に近く、絶えず神を賛美し続ける存在です。

その姿は、「3対6枚の翼を持ち、その内の2枚で頭を、2枚で足を隠し、残りの2枚で羽ばたいている」とされています。

第2位:智天使(ケルビム)

神の姿を見ることができる(=智:ソフィア)ことから「智天使(ちてんし)」という訳語をあてられました。

智天使(ケルビム)

知恵と真理の守護者です。

聖書では「エデンの園を守る炎の剣を持つ存在」として登場し、神の知識を人間世界に伝える役割を担ました。

第3位:座天使(スローンズ)

座天使(ざてんし)の名は「玉座」や「車輪」の意で、唯一神たる主の戦車を運ぶ者とされます。

また、「意思の支配者(Lords of Will)」の異名を持ちます。

Thrones, St Michael and All Angels', Somerton
Andrewrabbott, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
座天使、ステンドグラス、聖ミカエル及諸天使教会

神の正義と秩序を支える「玉座」の象徴です。

神の判断を媒介し、他の天使に神の意志を伝える調整者のような存在です。

第4位:主天使(ドミニオン)

主天使(しゅてんし)の名は「統治」「支配」の意です。

Dominions, St Michael and All Angels', Somerton
Andrewrabbott, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
主天使、ステンドグラス、聖ミカエル及諸天使教会

下位の天使たちを統率し、天界全体の調和を守ります。

力の使い方や使命の分配を司る「管理者的天使」です。

第5位:ヴァーチューズ(力天使)

力天使(りきてんし)は、窮地に陥った人間に勇気を与え、その持つ力を引き出す所から来ています。

Virtues, St Michael and All Angels', Somerton
Andrewrabbott, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons 力天使、ステンドグラス、聖ミカエル及諸天使教会

神の奇跡や自然の力を司る存在です。

秩序や調和、美しさの維持に関わり、芸術や創造のインスピレーションを与えます。

第6位:パワーズ(能天使)

能天使(能天使)の由来は、全ての能力の源である原理と同一化する性質から来ています。

Powers, St Michael and All Angels', Somerton
Andrewrabbott, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
能天使、ステンドグラス、聖ミカエル及諸天使教会

神の意志を実行する「戦士の天使」です。

悪の勢力や混沌を抑え、宇宙の均衡を保つ守護的な役割を与えられています。

第7位:プリンシパリティーズ(権天使)

この天使のミッションは、地上の国々や都市を守り、統治・支配することです。

即ち、主権や権力を象徴するところから、「権天使」という名称がつきました。

Principalities, St Michael and All Angels', Somerton
Andrewrabbott, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
権天使、ステンドグラス、聖ミカエル及諸天使教会

上記で申し上げた通り、国や民族、地域を見守る存在です。

第8位:アークエンジェル(大天使)

St Michael La Martorana Palermo 2008-08-27
Jastrow, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons 大天使、ミカエル

神のメッセンジャーとして重要な使命を担っています。

ミカエル、ガブリエル、ラファエルなどが有名で、人間への啓示や守護を行います。

第9位:エンジェル(天使)

最も人間に近い階級で、個人の守護や導きを担当します。

いわゆる「守護天使」はこの階層に属しています。

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階級が象徴する意味とスピリチュアル的解釈

天使の9階級は、単なる上下関係ではなく、「意識の段階」や「魂の成熟」を象徴する体系として捉えられます。

神に最も近い上位の天使は、純粋な愛や知恵そのものを体現し、下位に行くほどそのエネルギーは具体的な形となって現れ、人間世界へと届いていきます。

つまり、天使の階層は「神の意志が現実化するプロセス」を象徴しているのです。

スピリチュアルな視点では、私たち人間もまた、この階梯の一部に位置していると考えられます。

魂の成長は、天使の階層を上昇していくような旅路であり、愛・知恵・奉仕といった徳を身につけるほど、高次の意識と共鳴していく……そんな「内なる天界」を歩むとも言えるでしょう。

また、「守護天使」は最下層のエンジェル階級に属し、私たち個人と最も近い位置で関わります。

日常の中でふと感じる直感や、導かれるような出来事は、守護天使からのサインと解釈されることもあります。

彼らは神の光を私たちのレベルに合わせて翻訳し、より実践的なメッセージとして届けてくれる存在なのです。

このように、天使の階級は単なる神話的構造ではなく、「宇宙の秩序」と「人間の心の成長」を結ぶ象徴体系とも言えます。

上位の天使たちは私たちの到達点を、下位の天使たちは日々の支えを表し、それぞれが「神の意志を分担して生きる」という壮大なネットワークを形づくっています。

文化・作品に見る「天使の階級」の表現

天使の階級という概念は、宗教思想の枠を超え、芸術・文学・現代のポップカルチャーにまで深く影響を与えてきました。

中世ヨーロッパでは聖画やステンドグラスにおいて、階級ごとに異なる姿で天使が描かれ、セラフィムは6枚の翼を持ち、ケルビムは複数の顔を持つなど、象徴的な形態で表現されました。

これらは神の光を視覚的に伝えるための「神学的アート」でもあったのです。

近代以降になると、天使の階級はより象徴的・物語的なモチーフとして描かれるようになります。

たとえば、ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』では、堕天使ルシファーがかつて高位の天使であったとされ、階級の崩壊=神への反逆がテーマ(ジョン・ミルトン『失楽園』(岩波文庫)等)となっています。

楽園を追放されるアダムとエバ

ここでは「秩序と自由」「光と影」といった対立が、階級構造を通じて描かれています。

現代のアニメ・ゲーム・ファンタジー作品でも、天使の階級は“神聖と闇の境界”を描く装置として頻繁に使われています。

『新世紀エヴァンゲリオン』における「使徒」の概念、『ベヨネッタ』や『真・女神転生』シリーズの天使たちなどは、聖書的ヒエラルキーをもとに再構築された存在です。

特に、「セラフィム」「ケルビム」「アークエンジェル」といった名称は、キャラクターの格や力関係を象徴するためのキーワードとして多用されています。

このように、天使の階級は時代とともに姿を変えながらも、「秩序と神秘の象徴」としての力を失っていません。

宗教的背景を離れても、人間は「上なる世界の秩序」「不可視の階層構造」に惹かれ続けています。

古代の神秘思想から現代ファンタジーまで、天使の階級は「人間の想像力が神に手を伸ばすための梯子」として、今もなお語り継がれているのです。

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※「雑談の部屋」の最新記事のため次の記事はないので、トップの記事を挙げておきます。

※「雑談の部屋」の一つ前の記事です。

最後に

天使の9階級は、単なる上下関係ではなく、神の意志が世界へ届くまでの流れを象徴しています。

セラフィムが神の愛の炎を受け取り、ケルビムがそれを知恵として整え、そして最後に守護天使が人間へ導きを届ける――その連なりこそ、宇宙全体の秩序を支える見えない仕組みです。

この階級構造は、私たち人間社会にも通じる普遍的なテーマを示しています。

それは「優劣」ではなく「役割の違い」。

それぞれが自分の使命を果たすことで全体が調和する――という考え方です。

もしあなたがふと「見えない力に守られている」と感じるとき、それは下位の天使たちがあなたに寄り添い、神の光を日常の中へ翻訳してくれているのかもしれません。

天使の階級を知ることは、宇宙の秩序を学ぶことであり、同時に自分自身の内なる光を見つめ直すことでもあるのです。

参考
ディオニュシウス・アレオパギタ(偽ディオニュシウス)『天上位階論』岩波文庫、1990年。
トマス・アクィナス『神学大全』創文社、1963年。
『聖書(新共同訳)』日本聖書協会、1987年。
高橋義人『天使論入門――神秘思想と西洋宗教の世界』講談社選書メチエ、2002年。
川端純四郎『キリスト教と天使たち――聖書に見る天界の秩序』教文館、2010年。
ローズマリー・E・ガイリー著/松田和也訳『天使百科事典』原書房、2008年。
マルコム・ゴッドウィン著/井上博訳『天使の美術史』河出書房新社、1995年。
池上英洋『天使と悪魔の美術史』筑摩書房、2016年。
ドリーン・バーチュー『エンジェル・セラピー』ナチュラルスピリット、2004年。
カトリック中央協議会公式サイト「カトリック教会の教え」https://www.cbcj.catholic.jp/

※「雑談の部屋」の記事はすごい大所帯です!

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この記事を書いた人

60爺

60路を越え、RaspberryPi と出会い、その関係でブログ開設(2017/2~)となりました。始めてみると、コツコツやるのが性に合ってしまい、漢字の記事から家の補修・将棋・windows10関係・別名・言い方などジャンルを拡大して今に至ってます。まだまだ、元気なので新たな話題を見つけて皆様に提供できればと思っています。「プロフィールはこちら

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Posted by 60爺