貝3つの漢字「贔」!その読み方から熟語「贔屓」の語源など詳細を大公開
貝が3つ並んだ「贔」という漢字をご存知ですか?
見た目のインパクトから、タイトルにある「貝3つの漢字」あるいは「トリプル貝」なんて呼べそうが、正確な読み方や意味をご存知でしょうか?
そして、「贔屓(ひいき)」という熟語がありますが、ここでも「贔」の字が使われています。
この記事では、この貝3つの漢字「贔」を徹底的に解剖します。
その正確な読み方や意味、さらには、熟語「贔屓(ひいき)」が伝説の神獣に由来するという、驚きの語源まで、その全貌を大公開します。
読み終えたとき、あなたはきっとこの不思議な漢字と、その背景にある深い物語の「贔屓」になっているはずです。
さあ、一緒に「貝三つの漢字」の奥深い世界を覗いてみましょう!
貝3つの漢字「贔」の徹底解剖(読み方・意味)
まずは、「贔」という漢字について、基本的な情報から深く掘り下げていきましょう。
読み方と画数
- 画数:21画
- 音読み: ヒ(ヒイ)
- 訓読み: いか・る
「ヒイ」という音(呉音)が、熟語の「ひいき」にも繋がっていることが分かります。
なぜ「貝」が三つなのか?
漢字の構成は、贔=「貝(財物)」+「貝」+「貝」となっている会意文字(2文字以上の漢字を組み合わせて作られた漢字)です。
「貝」は古代において「宝物(財産や価値あるもの)」を意味しています。
これらが組み合わさり、「重い荷物を背負う」ことを表します。
「贔」の漢字が持つ主要な意味は以下の通りです。
- いか・る。鼻息荒く怒る
この意味は、「上級漢和辞典 漢字源 学研」から持ってきており、「贔」には、この意味以外載っていません。
ネットで検索できるサイトには、「引き立てる」とか「味方をする」意が出ていますが、これは、次の章で示す「贔屓」のものなんです。
「漢字源」にも、意味の2番目に「贔屭(ひき)」が出ていますが、それについては、次章で詳しく見ていただきます。
次は、書き順です。

上、左下、右下の貝を順に書いていけば終了です。
うまく形を整えましょう。
この章の最後に、皆さんに役立つ豆知識を2つご覧ください。
「贔」の字は、同じ構成要素(この場合は「貝」)が三つ、三角形に配置されています。
このような漢字の形を「品字様(ひんじよう)」と呼びます。
「品字様」の漢字の多くは、構成要素が三つ集まることで、「多いこと」や「極めて強いこと」を意味します。
「森(木が三つ)」や「晶(日が三つ)」などが有名ですが、「贔」もまた、「貝(たから)」の持つ力や価値が極めて強いことを示しているのです。
品字様(ひんじよう)の漢字では、以下の記事を書いています。
⇒ 金が3つの漢字「鑫」!読み方から意味・各機器での打ち方まで総特集
⇒ 虫が3つの漢字「蟲」!読み方・意味・由来・入力方法まで完全ガイド を選択
パソコン・スマホ・テプラで「贔」を打つには、「ひいき」と入力して変換し、「屓」を削除する方法が最も簡単です。
熟語「贔屓(ひいき)」の語源と成り立ち
次は、「贔屓(ひいき)」という熟語について、その語源と成り立ちに迫ります。
この言葉、日本では、「自分の気に入った者に対して肩入れし、優遇すること」を表しています。
この語源なんですが、漢語「贔屓(ひき)」の転なのです。
「贔屓(ひき)」のそれぞれの語を見ると、「贔(ひ)」は、鼻息荒く怒るさまで、「屓(き)」は、ひいひいと鼻で息をするさまを表します。
この言葉は、中国の「玉篇」という漢字字典に「贔、贔屓、作力也(力をなすなり)」と説明されています。
日本の「色葉字類抄・前田本」という古辞書にも「贔屓 ヒイキ チカラオコシ」と出ていて、もとの意味は「力を入れる」ことだったのです。
そこから、あるものに力を入れる、後援するのような意味に転じたのです。
ただ、この「贔屓(ひき)」なんですが、「漢字源」では、別の意味が載っているんですよ。
ひとつは、「ひいひいと鼻息を吹いて頑張るさま」です。
これ、たった今、説明した「力を入れる」につながると考えます。
そして、もう一つの意味が、国の伝説に登場する神獣に由来するのです。
「贔屓」は伝説の神獣

Vmenkov, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
贔屓。盧溝橋
「贔屓」は、なんと、中国の伝説で竜が生んだ九匹の子(竜生九子)の一柱である神獣の名前で、大きな亀に似ています。
重いものを背負うのが好きとされるので、上記の写真のように、石碑の下に石を負った形に彫られます。
また、贔屓に似たカエルを「ヒキ」というそうです。
ヒキガエル
のことかなあ……。
※神獣について記事を書いています。
「贔屓」の「屓」は異体字で、「屭」が標準字形ですね。
部首「尸(しかばね)」に、貝が3つも入った珍しい漢字です。
「贔屓」にまつわる使い方等
「贔屓」という言葉は、日常生活からビジネスシーンまで幅広く使われますが、その正しい使い方や、類語・対義語を知っておくと、より表現が豊かになります。
現代における「贔屓」の使い方
「贔屓」は、上述したとおり、特定の人や団体を特に目をかけて優遇したり、応援したりすることを意味します。
| 贔屓の使い方 | 意味合い |
|---|---|
| 店を贔屓にする | 特定の店を特別に愛用し、繰り返し利用すること(=ご愛顧) |
| 贔屓の役者 | 特に好きで応援している、お気に入りの役者 |
| 贔屓目(ひいきめ)に見る | 感情的な好意から、実際よりも良い評価をすること |
| ご贔屓ありがとうございます | 客や支援者に対し、特別な愛顧へ感謝を示す丁寧な表現 |
類語と対義語で深める理解
「贔屓」が持つニュアンスをより深く理解するために、似た意味の言葉や反対の意味の言葉を確認しておきましょう。
まずは、類語から見ていきましょう。
- 肩入れ:ニュアンスとしては、感情的・具体的な支援の度合いが強い
- ご愛顧:店やサービスに対する顧客側の継続的な好意的な利用
- 引き立て:特定の人に目をかけ、世話をすること。柔らかい印象を与える。
次は、対義語です。
- 公平:誰に対しても偏りなく扱うこと
- 平等:すべての人や物事を同じように扱うこと
- 公正:特定の人だけの利益を守るのではなく、だれに対しても公平に扱う様子
贔屓を使ったことわざ
ひいきを使った諺もいくつかあります。
| ことわざ | 意味 |
|---|---|
| 依怙贔屓(えこひいき) | 特定の人や物に偏って肩入れすること |
| 贔屓の引き倒し | ひいきをし過ぎて、かえって相手を不利にし迷惑を及ぼすことをいう |
| 判官贔屓 | 弱い者や不運な人、悲劇の主人公に同情して肩入れしたり応援したりする心理 |
依怙贔屓は、「えこひいき」と読む四字熟語で、「依怙」は偏った支持を意味し、ネガティブなニュアンスで使われます。
贔屓の引き倒しは「ひいきのひきたおし」と読み、意味は上記の通りです。
判官贔屓は「ほうがんびいき」と読み、源義経(判官)の薄幸な生涯に由来しています。
最後に
本記事では、貝が三つ並ぶ難解な漢字「贔」を切り口に、その読み方や強大な力の意味、そして熟語「贔屓(ひいき)」が古代中国の力持ちの神獣にの意味を持つという驚きの物語を解説しました。
「贔屓」という言葉を使うたびに、重い石碑を力強く背負い、誰かを支え続ける神獣の姿を思い浮かべることで、この言葉の持つ力強さや温かさをより深く感じられるのではないでしょうか。
これで、あなたも「贔」という漢字の奥深さを理解した立派な「贔」ファンの一人です。
明日からは、自信を持ってこの珍妙漢字を使いこなし、周りの人たちにその語源を披露してみてください。








60爺



ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません