伊にんべんなしで「尹」!読み方から意味・苗字まで総特集
漢字の世界には、似ているようでいて実は別の由来をもつ文字が少なくありません。
「伊」という字からにんべんを取った「尹」も、その一つです。
一見すると単純な形の漢字ですが、そこにはどんな背景があるのでしょうか。
現在でも、歴史的な人物の名前に登場したり、地名や苗字として残っているため、知識として押さえておくと役立つでしょう。
また、この漢字の持つ意味は、律する心や秩序を正すイメージが込められるのも魅力的な点です。
この記事では、「尹」の読み方や意味の成り立ちから、実際に日本に存在する苗字の事例までを総合的に紹介していきます。
シンプルながらも力強さを感じさせるこの漢字の世界を、一緒に紐解いていきましょう。
伊にんべんなしで「尹」!漢字の読み方や全体像をまずはチェック
最初に、「尹」の意味と読み方や全体像をチェックしましょう。
「尹」の読み方と意味
始めに、「晃」の基本情報を見ます。
部首 | 尸(しかばね) |
画数 | 4画 |
音読み | イン |
訓読み | ただ・す、おさ |
意味 | ①ただ・す。調和して、乱れを起こさせないようにする ②おさ。行政の役所の長官③姓の一つ |
日本語だけの意味 | かみ。四等官で弾正台の第一位 |
尹の部首は尸(しかばね)です。
尹のどこに、この尸(しかばね)が入ってるのと首をかしげたくなる部首ですね。
この謎ときは次の章をご覧ください。
①の意味には、世の中をうまく調和させる人の意もあります。
類義語は「正」「均」です。
②の意の言葉に「県尹(中国・地方行政区画県の最高長官)」「京兆尹(中国で京師(首都)近郊を管轄した長官職)」があります。
どちらも、古代中国で使われていた言葉ですね。
尹の書き順
次は、尹の書き順を見ておきます。
4画の簡単な漢字です。

※ある漢字から部首を取った漢字を記事にしています。
⇒ 浦のさんずいなしは甫!読み方から意味・名前のつけ方まで総特集
⇒ 櫆きへんなしで「魁」!読み方から意味・名前の使われ方まで総特集
※漢字自体は簡単でも読み方の難しい漢字は多々あります。
もっと詳しく知ろう!尹の由来や成り立ち
尹の解字です。
尹=「|(指揮棒)」+「又(手)」(会意)
この尹の甲骨文字は次の通りです。

この甲骨文字には、「又」(手に持つ)が含まれています。

ここから、指揮棒を持って采配する場面を表しているのです。
この「尹」は、形から「尸(しかばね)」という部首に含まれますが、漢字辞書によっては、「彐(けい)」という部首に入れられる場合もあるそうです。
この意匠を持って、上下の間を疎通し、うまく調和することをイメージさせます。
そこから、全体をうまくまとめるという意になります。
尹が含まれる名字
尹は、常用漢字でも人名用漢字でもないため、名前に付けることは出来ない漢字です。
この章では、尹が含まれる名字を探っていきましょう。
「尹」一文字の名字
始めに、「尹」一文字の名字から見ていきます。
【名字】尹
【読み】いん,い,いい,いうん,いし,ゆん,せい,ひ,ゆうん,わん
【全国順位】 7,712位
【全国人数】 およそ1,100人
参考 尹|名字由来net
「尹」一文字の名字がありました。
読みも多彩で、10もの読みがありました。
由来解説に「朝鮮半島(韓国・朝鮮)姓に多くみられる」とあるので、大陸から渡ってきた人も含まれるのでしょうか?
全国順位も7,700番台、人数も4桁を越えています。
都道府県別に見てみましょう。
都道府県 | 人数 |
---|---|
東京都 | およそ300人 |
大阪府 | およそ180人 |
兵庫県 | およそ140人 |
神奈川県 | およそ100人 |
埼玉県 | およそ50人 |
大都市に多く見られるようですね。
この5都府県で全体の7割の人数が含まれています。
「尹」に別の漢字が付いた姓
「尹」に別の漢字が付いた姓はどうでしょうか?
2つの名字しかありませんでしたが、一転、物凄く順位と人数が落ちています。
尹戸氏で86,000番台、尹本氏に至っては90,000番台にまで順位が落ちました。
人数は共に、およそ10人しかいない少数民族です。
尹戸氏は大阪府、尹本氏は奈良県に集中しています。
尹本氏の関連は井本氏だそうです。
この姓は、中臣鎌足が天智天皇より賜った藤原氏良門流、清和天皇の子孫の清和源氏、宇多天皇の皇子敦実親王を祖とする宇多源氏などもあるようです。
尹の出し方
パソコン・スマホ及びテプラの各機器で、尹の出し方を紹介します。
パソコン
文字変換で出すことができます。
「いん」と入力して変換キーを押してください。
変換候補が出てきますので、候補を探しましょう。
尹が見つかったら、クリックしましょう。
パソコンの場合、「ただす」「おさ」でも変換候補を押していくと見つけられます。
見つからない場合は、「単漢字」をクリックすると出てくるはずです。
Unicodeは「5C39」ですので、日本語で5C39入力後、F5キーを押せば「尹」が出てきますよ!
スマホ
こちらもパソコンと同じく、「いん」と入力して「ⅴ」をタップすると、表示される変換候補の中に「尹」が出てきます。
タップしましょう。
テプラ
残念ながら、下位機種(PRO SR300)だと「尹」は登録されていません。
上位機種(PRO SR530)なら登録されている(区分コード:5390)ので出すことができます。
「尹」がつく持つ地名・歴史上の人物
冒頭で触れた「尹」がつく持つ地名・歴史上の人物に触れておきます。
「尹」がつく持つ地名
中国に、かつて、河南尹(かなんいん)という地名がありました。
洛陽(雒陽)が都で、郡県制の後漢・曹魏・西晋・北魏の諸王朝で、洛陽県(雒陽県)の所属する上位行政区画である河南郡の特別な呼び名です。
「尹」がつく歴史上の人物
時代がバラバラですが、中国3名、日本2名の5名を挙げます。
名前 | 読み | 備考 |
---|---|---|
尹喜 | いんき | 中国春秋時代の伝説上の人物。老子から『老子道徳経』を授かった関所の長官。 |
尹焞 | いんとん | 宋代の道学者。金に南進に当って和睦の不可を説いた |
尹文子 | いんぶんし | 戦国時代、斉のひと。尹文が姓。著書に「尹文子」がある |
藤原伊尹 | ふじわらのこれただ | 晩年には摂政を務め、太政大臣まで上り詰めた人物 |
真田信尹 | さなだのぶただ | 戦国時代、名将・真田昌幸や幸村の陰で真田家を支えた知られざる実力者 |
真田信尹は時代小説でもお目にかかった人物です。
最後に
「伊にんべんなし」の「尹」は、古代から伝わる由緒正しい漢字であり、日本でも苗字や人名に用いられてきました。
その読みは主に「いん」ですが、文脈によっては異なる音読み・訓読みが与えられる場合もあります。
意味としては「ただす」「おさめる」といった正しさや秩序を象徴するもので、名付けや姓としても端正で誠実な印象を与えます。
また、東アジア圏では古くから姓として広く用いられています。
参考
上級漢和辞典 漢字源 学研
部首ときあかし辞典 研究社
尹を含む名字 |なまえさあち
※「その他の漢字」も大所帯になってきました
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