魚へんに夏と書く漢字は?専門辞書に存在する漢字の正体を追跡した
「魚へんに夏」という漢字ですが、実は、寿司屋さんの湯呑みにも載っていませんね!
実は、この漢字は一般的な漢和辞典には載っていない「幽霊文字」のような存在です。
しかし、詳しく調査を進めると、江戸時代の文献や一部の専門辞典にその正体が隠されていました。
この記事では、魚へんに夏という漢字の「読み方(ふぐ・あわび等)」「ワカシとの勘違いの理由」「古文献による正体」を、一次資料をもとに徹底的に解説します。
この記事を読めば、長年の謎がスッキリ解決するはずです。

魚へんの漢字のうち、つくりに春夏秋冬を当てた漢字ですが、魚へんに秋の鰍、魚へんに冬の鮗は既に記事にしています。
魚へんに夏の読み方は?「ふぐ」や「あわび」の正体を追跡
始めに、この魚へんに夏と書く漢字は存在するのかというところから確認します。
この漢字、どうやら存在するようですが、一般の辞書には載っていない希少な漢字のようです。
次のように、角川の大字源の国字一覧に「魚へんに夏」の漢字が載っていました!

他にも、次のような情報がありました。
- 『書言字考節用集』に「アハビ」
- 『倭字攷』は『音訓國字格』を典拠に「ふぐ」
※出典:次のサイトの「b11006 W2478」(「魚へんに夏」の漢字)です。
⇒ 【日本語を読むための漢字辞典】 『動物漢字の辞典』 【魚3】
また、次のような情報もあります。
- (1)ハエ・ハヤ・フグ・フクベ(集覧「水産名彙」)(2)*魚=サメ(集覧「摂陽群談」)
※出典:次のサイトの「1060」(「魚へんに夏」の漢字)です。
⇒ 真名真魚字典
魚へんに夏は「ワカシ」の書き間違い?混同される理由
上述したとおり、この「魚へんに夏」という漢字ですが、基本的に漢和辞典には載っていないようです。
ネットでも、漢字ペディア、モジナビ等の漢字を紹介しているサイトにも載っていないんですよ。

ところで、「魚へんに夏」は「ワカシ」という当て字がされているという記事が散見されましたが、魚へんに夏ではなく、「魚夏」の2文字を示しています!
ワカシは、東日本におけるブリの幼魚の名称です。
夏になると沿岸部に回遊し、漁獲量が増えるためこの字が当てられたようです。
ですから、あくまで「魚夏」という2文字の言葉なので、魚へんに夏という漢字ではないのです。
Xにも、「ワカシ=魚夏」がありました。
江戸時代の文献「還魂紙料」に見る魚へんに夏
また、江戸時代の柳亭種彦『櫧鳥囀』(1815年)に次の文言を見つけました。
木へんに夏と書いて榎(えのき)とよむのは、魚へんに夏と書いてふぐとよむみたいなもん
柳亭種彦『櫧鳥囀』11p
これ、上の結論で述べた、角川の大字源の国字一覧に「魚へんに夏」の漢字が「ふぐ」と一致します!
他には、魚へんに夏ではなく「鰒」なのは、書き間違えからこうなったという説があるようです。
似た説に、単に「鰒」がくずれた字が「魚へんに夏」になったというモノがあります。
「鰒」の旁である「复(ふく)」の頭にある「ノ・一」が「一」に崩れた字だということです。
崩れても、読みはそのまま「ふぐ・あわび」になるそうです。
なるほど、全く違うと思っていましたが、「ノ一」が「-」の下に「ノ」となったわけですか。
そう言われると、ちょっと納得です。
※魚へんに〇の漢字でクイズ形式にした記事を作りました。是非、チャレンジしてください。
存在しない漢字
「魚へんに夏」と同様に、辞書には載っていない「存在しない漢字」がいくつかあります。
過去にも、そんな漢字をいくつか扱ってきました。それが、こちらの三文字です!
- 草冠に未
- 木へんに酒
- 木へんに北
これらの漢字はありそうですが、実は存在しない漢字なんです。
草冠に未
この記事の中で明確に言っていますが、「草冠に未と書く漢字は存在しない!」んです。
これらの詳細については次の記事をご覧ください。
木へんに酒
「草冠に未」と同様、「木へんに酒」という検索が散見されますが、こちらも「木へんに酒と書く漢字は存在しない!」んですね!
「木へんに酒」の記事はこちらですよ。
木へんに北
もうひとつ、木へんでは「木へんに北」という検索もなされているようですな。
しかし、「木へんに北」という漢字も存在しないんですよ。
ありそうなんですが、実際はない漢字を3つ紹介しました。
魚へんに夏という文字があったら
次は、もし、「魚へんに夏」と書く漢字が一般的に辞書に載るとしたら何になるでしょう?
勝手に想像しまくってみます。
まずは、夏を旬とする魚を一部ですが一覧にしてみます。たくさんいますね。この中に候補がいるかな。
- アジ(鯵)
- アマダイ(甘鯛、尼鯛)
- アユ(鮎)
- カサゴ(鮋)
- ガザミ(ワタリガニ)(蝤蛑)
- カマス(魳)
- キス(鱚)
- クルマエビ(車海老、車蝦)
- コノシロ(コハダ)(鮗)
- スズキ(鱸)
- タチウオ(魛)
- ハモ(鱧)
- マゴチ(真鯒)
そこそこの数は挙がりましたが、漢字表記を見てみると、どの魚も「魚へんの漢字」を持っているんですね。
敢えて、この中に候補を見出すのは難しいかな。
何なら、これら夏を旬とする魚の象徴として、「魚へんに夏」という漢字を当てるのも一興かもしれませんね。
上記一覧の中で「魚へんに○○」でいくつか記事を書いています。
魚へんに冬の「鮗(コノシロ)」の旬が夏とは面白いですなあ!
最後に
魚へんに夏の漢字があるかを見てきました。
ウーン、「魚へんに夏」の漢字は、国字として存在しますが、一般の漢和辞典には載っていませんね。
その意味も、「あわび」「ふぐ」らしいのですが、どうもはっきりしません。
「ワカシ」だと述べているサイトは散見されるんですが、それは、「魚夏」のことを言っているんですよ。
※気づけば魚へんの漢字の記事も増えてきました














60爺




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